マアジの歴史と文化:日本の食文化に深く根差した鰺の世界
魚名の歴史と由来
マアジ、別名アジは、日本の食文化に深く根差した魚です。その名前は、様々な時代や地域で異なる呼び方が存在します。
例えば、『帝国博物館魚類標本目録』(1897年)では、マアジは「北海道」「佐渡」「新潟」「東京市場」などで見られると記されています。また、『和漢三才図会』(1712年)では、「あじ」という言葉が使われ、「鰺」は「あじ」と読まれ、「そう」という音も関連しています。
江戸時代の『魚鑑』(1831年)では、鯵(アジ)の字が「シン」として訓読みされており、「味がいい」という意味から「あじ」と呼ばれるようになったという説もあります。
この名前は1980年代の築地市場などで広く使われていました。さらに、旧暦の3月にあたる時期がマアジの旬であるため、「鰺」の文字が「参」(3月)を表しているという説もあります。
マアジの特徴と生態
マアジは、北海道から九州南岸、瀬戸内海、屋久島、種子島などに広く分布しています。特に日本海、東シナ海、太平洋沿岸に多く見られ、少ないながらも黄海、渤海、朝鮮半島全沿岸、台湾、中国東シナ海・南シナ海沿岸、海南島などにも分布しています。
産卵期は1月から11月にかけてで、特に西日本では1月から5月、東日本では5月から7月が産卵の最盛期です。エビやプランクトン、イワシの稚魚、多毛類などを食べることが知られています。
マアジには「クロアジ(黒鰺)」と「キアジ(黄鰺)」の2型が存在します。キアジは、身体の背部が黄色みを帯び、脂肪分が多く沿岸の浅海域に生息します。対照的にクロアジは、沖合を回遊し、細長い体型で脂肪含量が少ない特徴があります。
地方名と市場名
マアジは地方によって様々な名前で呼ばれています。地方名や市場名には長い歴史があり、それぞれの地域ごとに独自の呼び名が存在します。これらの名前は、その地域の文化や歴史、マアジとの関係を反映しています。
あじのおすすめレシピ
ここで、あじを使ったおすすめレシピをご紹介します。
あじの酢煮
- 材料(4~6人前、180kcal):
- あじ: 8匹
- りんご酢: カップ1
- しょうが(薄切り): 5~6枚
- しょうゆ、砂糖、酒
- 調理手順:
- あじはゼイゴを取り除き、腹ワタとエラを除いて洗い、水けをふき取ります。
- 広い鍋にりんご酢と水3カップを入れ、あじとしょうがを加えて落としぶたをし、煮立ったら弱火にして1時間ほど煮ます。
- 煮汁を捨て、しょうゆ1/2カップ、砂糖大さじ5、酒大さじ3を加え、再び落としぶたをして弱火で約30分煮ます。汁けがなくなるまで煮て、器に盛り付けて木の芽を添えます。
あじの新緑酢
- 材料(4人前、140kcal):
- 刺身用あじ: 4匹(約600g)
- きゅうり: 1本
- みょうが: 1個
- 塩、酢、砂糖
- 調理手順:
- あじを三枚におろし、腹骨を取り、血合いの小骨を抜いて皮をむき、塩を振って身をしめ、酢をふって汁けをふく。
- みょうがを薄切りにし、熱湯で軽く煮てから酢、砂糖、塩と合わせて漬ける。
- 新緑酢を作る。きゅうりをすりおろして汁けをきり、調味料を加えて混ぜる。
- あじに切り込みを入れ、切って器に盛り、新緑酢をかけてみょうがを添え、紅たでをのせる。
あじの南蛮漬け
- 材料(4人前、270kcal):
- 小あじ: 12匹
- たまねぎ(大): 1個
- 細ねぎ: 2束
- 赤とうがらし: 2本
- 米酢、砂糖、塩、しょうゆ
- 塩、小麦粉、揚げ油
- 調理手順:
- あじはゼイゴを取り、エラと腹ワタを除いて洗い、水けをふく。
- 南蛮酢を作る。たまねぎを薄切りにし、細ねぎと赤とうがらしを輪切りにして、米酢、砂糖、塩、しょうゆと水を加えて混ぜる。
- あじに塩を振り、小麦粉をまぶして160℃の油で揚げ、南蛮酢につけて30〜40分置く。
まとめ
マアジは、その味わい深い味と豊富な栄養で、日本の食文化に欠かせない魚です。その名前の由来や、地方ごとの呼び名は、日本各地の歴史や文化を映し出しています。また、その生態や特徴は、日本の自然環境の多様性を表しているとも言えるでしょう。