一年の幕開けを特別なものにする、お正月について
新しい年を迎える「お正月」は、日本人にとって一年で最も大切な伝統行事のひとつです。初詣に出かける方、おせち料理を囲む方、福袋を求めて初売りに並ぶ方、お年玉を楽しみにする子どもたち……それぞれの楽しみ方があるでしょう。しかし、意外と知られていないのが、お正月そのものの由来や歴史、そして正しい過ごし方です。
今回は、お正月がいつから始まったのか、いつまでがお正月なのか、どのような過ごし方が縁起が良いとされているのかなど、ご紹介します。
目次
お正月の由来と歴史を紐解く
祖先を敬う心から始まった日本のお正月
日本のお正月は、もともと祖先に感謝し、先祖の霊を祀るための行事だったと伝えられています。その後、時代とともに変化し、五穀豊穣をもたらす神様(歳神様)をお迎えし、その年の豊作を祈る行事へと発展していきました。
詳しい起源は明確になっていませんが、日本の年中行事としては最古のもののひとつとされ、少なくとも6世紀半ばには、すでにお正月の風習が存在していたといわれています。平安時代後期には、「お年賀」の挨拶が貴族社会で行われていたという記録も残っています。
現在のように門松やしめ飾り、鏡餅などの正月飾りが庶民の間でも広く行われるようになったのは、江戸時代中期のことです。この頃から、おせち料理も一般家庭で食べられるようになりました。
興味深いのは、初詣として神社に参拝する習慣が定着したのが明治時代以降と、比較的新しいことです。初詣は都市部から始まった慣習で、鉄道の発達とともに全国に広まっていきました。つまり、私たちが今楽しんでいるお正月のスタイルは、江戸後期に始まり、明治時代にかけて確立していった、意外と新しい伝統なのです。
地域によって異なる、お正月料理のレシピ
日本各地には、それぞれ独自のお正月の風習があります。例えば、関東では角餅を焼いて食べるのに対し、関西では丸餅を煮て食べるのが一般的です。また、お雑煮の味付けも、すまし汁仕立てや白味噌仕立てなど、地域によって大きく異なります。
お正月はいつまで?松の内の期間を知る
1月7日までが「松の内」
お正月は「松の内」と呼ばれる期間を指し、一般的には1月7日までとされています。この期間中は、門松やしめ飾りを飾り、歳神様をお迎えしている状態です。
ただし、地域によっては松の内の期間が異なることもあります。関西の一部では1月15日までを松の内とする地域もあり、正月飾りを外す時期もそれに合わせて変わります。
お正月にまつわる用語を整理
お正月には、似たような言葉がいくつもあって混乱しがちです。ここで、主な用語を整理しておきましょう。
| 用語 | 意味 | 時期 |
|---|---|---|
| 元日 | 年の初めの日 | 1月1日 |
| 元旦 | 元日の朝 | 1月1日の朝 |
| 正月三が日 | お正月の最初の三日間 | 1月1日~3日 |
| 松の内 | 正月飾りを飾っておく期間 | 1月1日~7日(地域により異なる) |
| 小正月 | 元日を「大正月」とするのに対する呼び方 | 1月15日 |
| 松上がり/松送り | 正月飾りを取り外すこと | 1月6日または7日 |
初夢は一富士二鷹三茄子
1日から2日にかけての夜に見る夢を「初夢」といいます。昔から「一富士二鷹三茄子」という言葉があり、これらを夢に見ると縁起が良いとされてきました。
この三つは、駿河国(現在の静岡県)の高いものの順番で、江戸幕府を開いた徳川家康が好んだものともいわれています。「富士」は不死や無事に通じ、「鷹」は高く飛ぶ強い鳥として出世や成功を、「茄子」は「成す」という言葉に通じて願いが叶うことを象徴しているとされています。
初詣や書き初めなど、お正月の伝統的な過ごし方
初詣で一年の無事を祈る
新年になって初めて神社や仏閣にお参りすることを「初詣」または「初参り」といいます。初詣は必ずしも元日に行く必要はなく、混雑を避けて正月三が日の間にお参りする方も多いでしょう。
実は、初詣の時期については諸説あり、1月7日までの松の内に行けば良いという考え方や、1月15日の小正月までに参拝すれば問題ないという考え方もあります。大切なのは、新しい年を迎えた感謝の気持ちと、一年の無事を祈る心です。
書き初めで新年の目標を設定
お正月の伝統行事として忘れてはならないのが「書き初め」です。新年の始まりに、今年の目標や抱負を筆で書くことで、気持ちを新たにすることができます。
普段お習字をする習慣がないという方も、お正月だけは筆を持ってみると、意外な発見があるかもしれません。最近では、書道教室や地域の公民館などで書き初めのイベントが開催されることもあるので、参加してみるのも良いでしょう。
字が上手でなくても構いません。大切なのは、一年の始まりに自分の思いを文字にして表現することです。子どもと一緒に書き初めをすれば、家族の絆も深まります。
お年玉の由来と意味
子どもたちが楽しみにしているお年玉。実はこれも、れっきとした伝統行事です。もともと「お年玉」とは、歳神様の魂(玉)を分けていただくという意味があり、神様にお供えした鏡餅を分け与えることが起源だったといわれています。
時代とともに、お餅がお金に変わり、現在のような形になりました。お年玉を渡すときは、ポチ袋に入れて渡すのが礼儀です。ポチ袋の「ポチ」は関西弁で「少し」「わずか」という意味があり、謙遜の気持ちが込められています。
お正月の過ごし方で気をつけたいこと
昔から伝えられている「やってはいけないこと」
各家庭に大切な歳神様をお迎えするお正月だからこそ、昔から「やってはいけない」とされてきたことがいくつかあります。現代ではすべてを守るのは難しいかもしれませんが、その由来を知っておくと、お正月の過ごし方がより有意義になるでしょう。
元日に避けるべきとされる行為:
- 炊事場などで火や水を使うこと:神様が食事をされる場所であるため、人間が使うのは控えるべきとされました
- 掃き掃除をすること:福の神様まで掃いて出してしまうという考えから
- お風呂に入ること:福の神様を流してしまうという言い伝えから
- 包丁など刃物を使うこと:良い縁を切ってしまうという縁起から
- 大きなお金を使うこと:散財する年になってしまうという考えから
これらの習わしは、神様への敬意を示すとともに、普段忙しく働いている主婦(主夫)を休ませるという実用的な意味もあったと考えられています。
現代的な解釈と実践方法
ただ、三が日すべてでこれらを守るのは現代の生活では難しいため、今では、せめて元日だけでも意識してみるという家庭も多いようですね。例えば、元日の食事はおせち料理やお雑煮など、前日までに準備したものを中心にして、できるだけ火を使わないようにする、掃除は控えめにするなど、無理のない範囲で伝統を取り入れることができます。
お正月といえば欠かせない食の縁起物
寿留女(スルメ)に込められた願い
お正月の縁起物として、意外と知られていないのが「寿留女(スルメ)」です。干したスルメイカのことで、昔から祝い事には欠かせない縁起物として扱われてきました。
長期保存ができることから、その漢字表記にも深い意味が込められています。「寿」は長寿を、「留」は一生嫁ぎ先に留まることを、「女」は良い妻であることを表しています。また、「噛めば噛むほどに味の出る良い夫婦になるように」という願いも込められているのです。
恵比寿様を祀る棚には、しめ縄を飾り、寿留女や昆布、新巻き鮭などを飾る習慣が古くからあります。これらはすべて、縁起の良い食材として大切にされてきたものです。
鏡餅とお雑煮の意味
お正月といえば、やはりお餅が欠かせません。お餅は平安時代から神聖な食べ物として、神様に捧げてきた歴史があります。
「鏡餅」は、神様にお供えするお餅で、1月11日の鏡開きまで床の間や各部屋に飾っておきます。丸い形は鏡を模したもので、昔の鏡は神様が宿る神聖なものとされていました。また、二段重ねにするのは、円満に年を重ねるという意味があるといわれています。
鏡開きの日には、お供えしたお餅を下げていただきます。このとき、包丁で切るのは縁起が悪いとされ、木槌などで叩いて割るのが正しい方法です。「切る」ではなく「開く」という言葉を使うのも、縁起を担いでのことです。
地域で異なるお雑煮の楽しみ
お雑煮は、地域によって具材や味付けが大きく異なるのも魅力のひとつです。関東では角餅を焼いてすまし汁に入れるのが一般的ですが、関西では丸餅を煮て白味噌仕立てにすることが多いです。
また、香川県では餡餅を入れた甘いお雑煮が伝統的ですし、島根県や鳥取県では小豆汁に餅を入れることもあります。このように、日本全国で多様なお雑煮文化が育まれてきました。
お雑煮に入れる具材も地域によって様々で、鶏肉、魚介類、野菜など、その土地の特産物が使われることが多いです。ハレの日の食べ物として、家族みんなで囲む温かいお雑煮は、新年の幸せな時間を象徴する料理といえます。
新年を気持ちよく迎えるための「正月事始め」
12月13日から始まるお正月準備
お正月の準備を始めることを「正月事始め」といい、一般的には12月13日がその日とされています。江戸時代の江戸城では、この日に「煤(すす)払い」が行われていたことから、江戸庶民の間にも広まったとされています。
12月13日が選ばれたのには理由があります。古代中国の暦占いで「万事進むに大吉」とされていた日であり、お正月の準備を始めるのにふさわしい縁起の良い日と考えられたのです。
大掃除と不用品の整理
正月事始め以降、年末にかけて行うのが大掃除です。一年間にたまった埃や汚れを落とし、不用品を処分して、新年を清々しい気持ちで迎えるための大切な準備です。
昔は「煤払い」といって、囲炉裏や竈(かまど)に溜まった煤を落とすことが主な作業でした。現代では、家全体を掃除し、普段手の届かない場所まできれいにする機会として、大掃除が受け継がれています。
大掃除のポイントは、計画的に進めることです。一日で全部やろうとせず、場所ごとに日を分けて少しずつ進めていくと、無理なく終えることができます。
正月飾りを飾る適切な時期
門松、しめ飾り、鏡餅などの正月飾りは、いつ飾るのが良いのでしょうか。実は、飾る日には縁起の良し悪しがあるとされています。
避けるべき日:
- 12月29日:「二重苦」に通じるため「苦立て」といって縁起が悪いとされます
- 12月31日:「一夜飾り」といって、神様に失礼にあたるとされます
適切な日:
- 12月28日:末広がりの「八」で縁起が良い日とされます
- 12月30日:29日と31日を避けるため、この日を選ぶ方も多いです
門松、しめ飾り、鏡餅はすべて同じタイミングで飾るのが一般的です。大掃除が終わった清潔な家に飾ることで、歳神様を気持ちよくお迎えする準備が整います。
おせち料理で新年を華やかに
おせち料理の由来と意味
おせち料理は、お正月に欠かせない伝統的な料理です。もともと「御節供(おせちく)」と呼ばれ、節句に神様にお供えする料理を指していました。それが、一年で最も重要な節句であるお正月の料理を特に「おせち料理」と呼ぶようになったのです。
おせち料理に使われる食材には、それぞれ縁起の良い意味が込められています。黒豆は「まめ(まじめ)に働き、まめ(健康)に暮らせるように」、数の子は「子孫繁栄」、田作りは「五穀豊穣」、昆布巻きは「よろこぶ」といった語呂合わせなど、新年の幸せを願う気持ちが込められているのです。
現代のおせち選びのポイント
最近では、伝統的な和風おせちだけでなく、洋風や中華風のおせち、和洋中が楽しめる折衷タイプなど、多様なおせち料理が登場しています。家族の好みや人数に合わせて選べるのも、現代ならではの楽しみ方です。
おせちを選ぶ際のポイントは、人数、品目数、そして保存方法です。冷蔵で届くおせちは解凍の手間がなく、すぐに食べられるのが利点です。また、品目数が多いほど、様々な味を楽しむことができます。
おすすめのおせち料理をご紹介
お正月を華やかに彩るおせち料理を、いくつかご紹介します。それぞれ特徴があるので、ご家族の人数や好みに合わせて選んでみてください。
3~4人前の和洋中おせち
和風、洋風、中華の三種類の味わいが楽しめる三段重のおせちです。50品目という豊富な品数になっています。冷蔵で届くため、解凍の手間なくすぐに食べられるのもいいですね。
4~5人前の特大おせち
親戚が集まる新年や、ゲストを招いてのお正月にぴったりの大容量おせちです。特大8寸の重箱に58品目が盛り込まれていて、見た目の華やかさも抜群。和風の伝統料理から洋風、中華風まで、バラエティ豊かな内容で、どの年代でも楽しめるものになっています。
3~4人前の和洋折衷おせち
お手頃なサイズの6寸重箱に、45品目を贅沢に盛り込んだ和洋折衷おせちです。伝統的な食材と、現代的なアレンジメニューのバランスが良く、幅広い世代に楽しんでいただける内容になっています。コンパクトながら品目数が多く、様々な味わいを楽しめるのが特徴です。
まとめ
少しだけ昔ながらの風習を取り入れて、特別な時間にしてみるときっと、いつもとは違う、心温まる新年のスタートを切ると思います。
一年の幕開けを、美味しいおせち料理と共に、ご家族皆様でお楽しみください。



