秋に楽しむ団子の世界
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中秋の名月と月見団子
満月を愛でる「中秋の名月」の季節がやってきました。旧暦8月15日にあたるこの日は「十五夜」とも呼ばれ、日本では古くから月見団子を供えて月を愛でる風習が根付いています。
実はこのお月見、平安時代の宮中では詩歌を詠みながら月を愛でる優雅な催しが開かれ、やがて江戸時代には庶民の間にも広がって、確立された文化なんです。
月見団子の丸い形は満月を模したものですが、なぜ団子なのか、なぜ15個なのか、そしてなぜススキや里芋と一緒に供えるのか。これらの疑問を解き明かしながら、日本の美しい月見文化の魅力をご紹介します。
中国から伝来した月への祈り
中秋の名月の起源は、古代中国の「中秋節」にさかのぼります。中国では旧暦8月15日を「中秋節」として盛大に祝い、月餅と呼ばれる丸いお菓子を供えて家族団らんの時を過ごす習慣がありました。この風習が平安時代初期の897年頃に日本へ伝来し、宮中行事として「観月の宴」が始まったとされています。
当時の貴族たちは、月光の下で和歌を詠み、楽器を奏でながら風流を競いました。『竹取物語』や『源氏物語』にも月を愛でる場面が数多く登場するのは、この時代から月が特別な存在として扱われていたことを物語っています。
中国の影響を受けながらも、日本では独自の発展を遂げました。特に注目すべきは「十三夜」という概念の誕生です。十五夜だけでなく、その後に訪れる旧暦9月13日の月見も重要視し、両方を祝って初めて「両見月」として完成するという考え方は、まさに日本人らしい美意識の現れといえるでしょう。
宮中から庶民へと広がった月見文化
平安時代の宮中行事として始まった月見は、鎌倉・室町時代を経て、江戸時代には庶民の間にも広く定着しました。この普及の背景には、農業を営む人々にとって月の満ち欠けが重要な時の指標であったことと、秋の収穫期と重なることで感謝の気持ちを表現する行事として受け入れられやすかったことがあります。
江戸時代の文献『東都歳事記』には、十五夜の朝に三寸五分(約10センチ)もの大きな団子を作る習慣が記されており、当時の月見がいかに盛大に行われていたかがうかがえます。また、子どもたちが竹の先に釘をつけて他家の月見団子を取っても「お月様のお下がり」として許される風習もあり、地域全体で月見を楽しむ温かい文化が育まれていました。
月見団子に込められた深い意味とは?
月見団子が丸い形をしているのは、もちろん満月を模したものですが、その意味はそれだけにとどまりません。丸という形は「完全性」「調和」「永続性」を象徴し、家族の絆や豊作への願い、そして来年も変わらず月を愛でることができる平和な日々への祈りが込められています。
15個の団子を積み上げるのは、十五夜の「十五」に由来しますが、この数にも意味があります。中国の陰陽思想では奇数は「陽」を表す縁起の良い数とされ、15は3×5という奇数の組み合わせで特に吉数とされてきたのです。
地域によって異なる団子の形と風習
興味深いことに、月見団子の形や供え方は地域によって大きく異なります。関東地方では真ん丸な白い団子が一般的ですが、関西地方ではお餅にあんこを巻いた里芋のような形をしているものが主流です。これは十五夜が「芋名月」とも呼ばれることから、里芋への感謝の気持ちを込めた形とも考えられています。

九州地方では、団子に餡を巻いた「へそ餅」と呼ばれるものが作られたり、中部地方では串に刺してタレをつけた「みたらし団子」風のものが供えられたりと、各地域によって多種多様に発展してきたんですね。
正式な月見のお供えには、専用の三方台を使用するのが伝統的な作法です。この白木の三方台は、団子を神聖な供え物として美しく配置するために欠かせないアイテムです。
なかなか個人の家庭でここまでそろえるというのは珍しいかもしれませんが、例えば施設やイベントなどで集ってお月見をする特別なイベントがあるときなんかは、こんな飾りを添えると、より本格的な気分になりますよね。
月見団子の作り方
伝統的な月見団子は、だんご粉(うるち米ともち米を混ぜた粉)で作られます。江戸時代には新米ではなく、夏を越した古米を粉にして使うことが多かったとされています。これは実用的な理由からで、古米を団子にすることでより美味しく消費できる知恵でもありました。
基本的な月見団子の作り方は意外にシンプルです。だんご粉に熱湯を少しずつ加えながらこね、耳たぶくらいの柔らかさになったら丸めて茹でます。茹で上がった団子は冷水にとって締め、水気を切ってから盛り付けます。重要なのは大きさで、あまり小さいと「仏団子」を連想させるため、ある程度の大きさを保つことが大切です。
15個の美しい積み方のコツ
月見団子を15個美しく積み上げるのは、実は高度な技術が必要です。伝統的な積み方は、下段に9個、中段に4個、上段に2個という配置が最も安定しています。しかし、正式には15個すべてを使うため、最上段に1個を乗せる必要があり、これが崩れやすさの原因となります。
コツとしては、下段の団子をやや平たく成形し、接触面を増やすことで安定性を高めることです。また、団子の水分量を調整し、表面に適度な粘り気を残すことで、お互いがくっつきやすくなります。現代では、見た目の美しさを保ちながら安定性も確保するために、14個で積み上げることも多く、これも立派な月見の形といえるでしょう。
忙しい現代生活の中でも、このような既製品を活用することで手軽に本格的な月見を楽しむことができます。様々な味わいが楽しめるこのセットは、家族みんなでお月見を楽しみたい方にぴったりですね。三方箱も付属しているため、届いたその日からすぐに美しいお供えができるのも魅力的です。
手作りの月見団子に挑戦する際は、品質の良い材料を選ぶことも重要です。この富澤商店のだんご粉は、うるち米ともち米の配合が絶妙で、初心者でも失敗しにくい仕上がりにな島原のります。
島原の郷土スイーツ「かんざらし」で涼やかなおもてなしを
長崎県島原市で100年以上愛され続けてきた「かんざらし」は、暑い季節にぴったりの上品な和スイーツです。その名の由来は、白玉団子を「寒ざらし(冷水にさらす)」ことから来ていると言われ、島原の美しい湧水文化とともに育まれてきました。
玉乃舎の島原かんざらしは、伝統製法を守りながら贅沢な原料で丁寧に作られた逸品。もちもちとした白玉団子は弾力がありながらも口どけがよく、甘すぎない蜜は最後まで飲み干せる上品な味わいです。冷やして食べれば夏の暑さを忘れさせてくれますし、常温でも白玉のもちもち食感と優しい甘さが楽しめます。
まとめ
「中秋の名月」と聞くと、お団子を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。月見団子を飾って月を眺めるという風習は、ただの季節のイベントではなく、日本の豊かな自然観や、家族を大切にする心を今に伝える大切な文化です。
忙しい毎日の中で、家族と一緒にお団子を作り、月を眺める時間は、かけがえのないひとときです。自然の美しさに触れ、心が満たされるのを感じられるでしょう。また、子どもたちにとっては、日本の文化に触れる良い機会にもなります。




