秋に知りたい、日本酒の秘密をご紹介!

10月1日は日本酒の日です。数ある記念日の中でも、この日付にはきちんとした理由があります。しかも10月は、一年のうちで日本酒がもっとも表情豊かになる季節。夏を越した酒が蔵から出てきて、新米の仕込みが始まり、燗をつけたくなる気温になる。日本酒を飲む人にとって、秋は特別な季節です。

今回は、なぜ10月1日なのかという由来から、この時期だけの「ひやおろし」、温度による呼び分け、そして酒器の選び方までを掘り下げてご紹介します。同じ一本の酒が、器と温度でどれほど変わるものか。その面白さが伝わればうれしいです。

10月1日が日本酒の日である理由

「酉」という字は酒壺だった

酒という漢字の右側にある「酉」は、それ自体が酒を意味する古い文字です。もとをたどれば、この字は酒を醸す壺の形をかたどった象形文字でした。口の細い壺に液体が入っている様子が、そのまま文字になったのです。

そして「酉」は、十二支の十番目にあたります。十二支はもともと月の順番を表すのにも用いられ、酉は十番目の月、つまり10月と結びつけられてきました。日本酒の日が10月1日に定められた一番の根拠がこれです。

十二支の動物としての「にわとり」はあとから当てられたもので、文字の起源は酒器にあった。このねじれが、なんとも面白いところです。

10月が酒造りの始まりだった時代

もうひとつの理由が、酒造年度です。酒蔵の一年は、暦の一年とは別の区切りで動いています。かつてはこの年度が10月1日に始まり、翌年の9月30日で終わるという形をとっていました。

なぜ10月なのかといえば、新米の収穫を受けて仕込みが始まる時期だからです。秋に米が穫れ、冬に仕込み、春に搾る。この流れが酒造りの基本であり、10月はその出発点でした。年度が改まる日として、蔵にとって10月1日は節目の日だったのです。

その後、酒造年度の区切りは7月1日からに変更されましたが、記念日のほうは10月1日のまま残りました。1970年代の終わりごろ、全国の酒造団体によって日本酒の日として正式に定められ、以来この日には各地で乾杯の行事が開かれています。

新米と新酒のあいだにある時間

秋に穫れた米がすぐ酒になるわけではありません。玄米を磨き、洗い、蒸し、麹をつくり、酵母を育て、もろみを仕込んで、発酵を待つ。搾って新酒として世に出るまでには、数か月の時間がかかります。

つまり10月に飲む酒は、前の年の米でつくられたものです。日本酒の日に味わう一杯は、去年の秋の実りが形を変えたもの。そう思って飲むと、また違った味がするかもしれません。

秋は「ひやおろし」の季節

一度だけ火を入れる酒

秋の日本酒を語るうえで欠かせないのが、ひやおろしです。これは製法というより、出荷のタイミングを表す言葉です。

一般的な日本酒は、搾ったあとと瓶詰めのときの二回、加熱処理をします。ひやおろしは、このうち搾ったあとの一回だけを行い、蔵の中で夏を越させて、秋に加熱せず瓶詰めして出荷する酒です。加熱せずに詰めることを生詰めと呼びます。

「冷や」のまま「卸す」という言葉のとおり、冷えた状態で蔵から出される。それがこの名前の由来です。

出荷時期で呼び名が変わる

ひやおろしは出回る時期によって、風情のある呼び分けがされています。

呼び名時期の目安味わいの傾向
夏越し酒(なごしざけ)8月末〜9月まだ若さが残り、みずみずしい
秋あがり10月熟成が進み、味がまとまってくる
晩秋のひやおろし11月もっとも円熟した状態。厚みがある

同じ蔵の同じ銘柄でも、出荷の月によって印象が変わります。三本そろえて飲み比べるという楽しみ方をする方もいるほどです。

秋の酒が好まれてきた背景

夏のあいだ、酒は蔵の中で静かに変化します。搾りたての鋭さが落ち着き、角が取れて、味の要素がまとまっていく。この変化を穏やかな熟成と呼びます。

秋になると気温が下がり、食卓にのぼる料理も脂や旨みの強いものへ移っていきます。きのこ、秋鮭、里芋、栗。こうした秋の食材と、熟成した酒の厚みが噛み合うのです。季節と酒質が同時に変わるからこそ、秋の日本酒は特別な扱いを受けてきました。

温度で名前が変わるという文化

五度刻みに名前がある

日本酒のもうひとつの特徴が、温度帯の豊かさです。冷たくしても、常温でも、温めてもおいしく飲める酒は、世界的に見てもそれほど多くありません。しかも日本語には、その温度ごとに名前が与えられています。

呼び名温度の目安印象
雪冷え5度前後香りは控えめ、輪郭が締まる
花冷え10度前後すっきりとして飲みやすい
涼冷え15度前後香りが立ちはじめる
冷や(常温)20度前後素の味わいがよくわかる
日向燗30度前後ほのかな温かさ。香りが開く
人肌燗35度前後米の甘みを感じやすい
ぬる燗40度前後もっとも旨みが出るとされる帯
上燗45度前後香りが強く立つ
あつ燗50度前後引き締まった辛口の印象に
飛びきり燗55度以上鋭く、後味が軽い

雪冷え、花冷え、日向燗。名前のつけ方そのものに、季節や情景を重ねる感覚が表れています。

燗のつけ方には作法がある

燗をつけるなら、湯煎が基本です。鍋に湯を張り、徳利を沈めて、ゆっくりと温度を上げていきます。徳利の首のあたりまで湯につけ、酒の表面が少し動きはじめたら人肌燗、湯気が立つころにはぬる燗を越えています。

電子レンジでも温められますが、容器の下と上で温度差が生まれやすく、一部だけ熱くなることがあります。手早く済ませたいときには便利ですが、味を見て飲むなら湯煎に手間をかける価値があります。

酒質による向き不向きもおおまかにあります。

酒のタイプ向いている温度帯
大吟醸・吟醸雪冷えから花冷え。香りを壊さないように
純米酒常温からぬる燗。旨みが開く
本醸造ぬる燗から上燗。すっきり飲める
生酒・生詰め冷やして。加熱しない酒の持ち味を生かす
長期熟成酒常温から人肌燗。香りがふくらむ

もっとも、これは目安にすぎません。同じ酒を三つの温度で試して、自分の好きな帯を見つけるのが一番の近道です。

湯煎用の細長い酒器であるちろりが付属するものなら、別に買いそろえる必要もありません。日向燗から飛びきり燗まで、同じ一本を段階的に試してみる。そんな飲み方ができるようになると、日本酒の見え方が変わります。

湯煎方式で燗をつける家庭用の酒燗器です。7段階の温度調節ができるので、人肌燗からあつ燗まで狙った温度帯を再現できます。保温機能付きのため、飲んでいるあいだに冷めてしまう心配もありません。湯煎用のちろりが付属しており、届いたその日から使えるのも利点。直火や電子レンジのように部分的に熱くなることがなく、酒質を生かした燗が安定してつけられます。ブラックの落ち着いた外観で、食卓に出したままでも馴染みます。

酒器で味は変わるのか

口の広さが香りを決める

結論から申し上げると、はっきり変わります。理由は単純で、器の形が香りの立ち方を左右するからです。

口の広い器は香りが空気中へ広く散り、飲むときに鼻へ届く量が減ります。反対に口がすぼまった器は、香りが内側にとどまり、飲む瞬間にまとめて立ちのぼります。ワイングラスが用途によって形を変えているのと同じ理屈です。

さらに、飲み口の厚みが舌への当たり方を変え、器の深さが一口の量を決めます。少量ずつ飲む器なら、酒が口の中で温まる時間が長くなり、印象がやわらぎます。

素材ごとの性格

素材性格向いている飲み方
ガラス香りも色も素直に伝わる冷やして飲む酒全般
陶器口当たりがやわらかく、丸みが出る常温から燗
磁器薄く、輪郭がはっきりする吟醸系、冷や
錫熱が素早く伝わる。まろやかになるといわれる冷酒、燗どちらも
漆唇に触れる感触が独特。温度が伝わりにくい冷酒、祝いの席
木(枡・杯)木の香りが移る祝い酒、冷や

同じ酒を器だけ替えて飲み比べると、「銘柄が違うのでは」と思うほど印象が動くことがあります。日本酒の日の楽しみ方として、これほど手軽で驚きの大きい実験はありません。

香りを設計したグラス

近年は、日本酒のために形を設計したグラスが増えています。吟醸系の果実を思わせる香りを適度に閉じ込めつつ、アルコール由来の刺激だけを逃がす、という考え方でつくられたものです。

透明なガラスであることも大きな利点です。発酵由来のうすい濁り、熟成によって差してくる淡い黄金色。そうした見た目の情報まで含めて味わえるのは、ガラスの器ならではです。

日本酒のために形状から設計された専用グラスです。フルーティーな香りを適度に閉じ込めつつ、アルコール由来の刺激臭は程よく逃がす独自のフォルムで、少量ずつでも香りがよく立ちます。透明な強化ガラス製のため、発酵由来の淡いにごりや熟成による黄金色まで目で楽しめます。家庭用食器洗浄機に対応しているので、日常の晩酌にも気軽に使える一脚。日本酒好きへの贈り物としても選ばれています。

手仕事のガラスで季節を映す

日本のガラス工芸には、四季の色を写しとる伝統があります。原料の調合そのものに職人の技が入り込み、同じ品番でもひとつひとつ表情が違う。そんな手仕事の盃は、酒そのものとは別の楽しみを食卓にもたらしてくれます。

盃は形によって性格が分かれます。外側に凹凸をつけて揺らぎを見せるもの、ゆるいカーブで手になじむもの、どっしりとして安定感のあるもの。小ぶりなものを選べば、少しずつ味わう飲み方に向きます。

原料の調合から職人の手が入る、四季を感じるハンドメイドガラスの盃です。外側に凹凸をつけて見た目に揺らぎをもたせたタイプで、容量50mlの小ぶりなサイズ。少しずつ愉しみたい方に向いた形です。ガラスならではの透明感で酒の色合いまで味わえ、手仕事らしい一点ごとの個性も魅力。食卓に季節感を持ち込みたいときに、ひとつ持っておきたい酒器です。

漆の盃という選択

漆の器は、唇が触れたときの感触がまるで違います。硬さがなく、体温に近いところで酒を受けとめる感覚があります。熱を伝えにくいため、よく冷やした酒を注いでも手のひらが冷えすぎません。

金属の素地に漆芸の技法を施した盃なら、漆のやわらかさと金属の薄さを併せ持ちます。手仕事のものは一点ごとに表情が異なり、使い込むほどに景色が深まっていくのも楽しみのひとつです。化粧箱に入ったものは、贈り物としてもよく選ばれています。

茶道具制作で知られる加賀蒔絵の工房が手がける、ひとつひとつ手造りのぐいのみです。ステンレスの素地に蒔絵の技法で漆を施すことで、持ちやすさと美しさを両立。使い込むほどに銀河のような文様が輝きを増していきます。よく冷やした酒を注いだときの佇まいが格別で、夜空を思わせる化粧箱入りのため贈り物にも向きます。海外の方へのギフトとしても選ばれている伝統工芸品です。

枡で飲むという習わし

祝いの席で枡に酒を注ぐ姿を見たことがあるでしょうか。もともと枡は米を量る道具でした。それが酒器として使われるようになった背景には、量る器で酒を受けることが、実りへの感謝と結びついていたという見方があります。

鏡開きのあとに振る舞われる酒、結婚式の祝宴、祭りの席。枡はいずれも節目の場面で登場します。ひのきの枡に冷えた酒を注ぐと、木の香りが酒に移り、独特の風情が生まれます。節分の豆まきにも使えるので、一年を通じて出番があるのも枡のよさです。

天然ひのきを使った無塗装の一升枡です。注いだ酒に木の香りが移り、枡酒ならではの風情が楽しめます。結婚式や祝宴の酒枡として、鏡開き後の振る舞い酒に、また節分の豆まきや神事にも使える一品。無塗装のため、ひのき本来の香りがしっかりと立ちます。フラワーアレンジメントの器やインテリアとしても使えるので、酒の季節が過ぎても出番があります。

片口と杯という組み合わせ

徳利と猪口のかわりに、片口と杯の組み合わせで飲むという形もあります。片口とは、注ぎ口がひとつだけついた器のこと。一合ほど入るものに冷えた酒を移しておけば、手元で何度も注ぎ分けられます。

ガラスの片口には実用的な利点があります。残りの量が見えるので飲んだ分量がわかりやすく、酒の色合いもそのまま目に入ります。氷水を張った鉢に片口ごと浮かべれば、簡易的な冷酒器にもなります。

杯が二つ付いたセットなら、誰かと向かい合って飲むときにそのまま使えます。日本酒の日に誰かを招くなら、こうしたひと揃いがあると食卓の形が決まります。

ガラスの片口と杯二つがそろった、冷酒のためのひと揃いです。片口は約360mlと一合を少し上回る容量で、冷やした酒を移しておけば手元で注ぎ分けられます。ガラス製なので残量と酒の色合いが見やすく、氷水に浮かべて冷やしながら使うこともできます。杯が二つ付いているため、向かい合って飲む席にそのまま出せる構成。日本製のシンプルなクリアガラスで、どんな食卓にも合わせやすい一組です。

時間が育てた酒を知る

日本にも古酒の伝統があった

日本酒は新しいものがよいと思われがちですが、長く置いた酒を尊ぶ文化も古くから存在しました。鎌倉から室町のころの文献にも、数年寝かせた酒が上等なものとして扱われた記録が残っています。江戸時代には、熟成させた酒が高値で取引されていたことも知られています。

長く寝かせた日本酒は、色が淡い黄金から琥珀へと深まり、香りにも変化が生まれます。米の甘みが濃く凝縮され、蜜やドライフルーツ、あるいは焦がした砂糖を思わせる香りが立つものもあります。冷やすよりも、常温から人肌ほどに温めたほうが、その奥行きが伝わります。

年号の違う酒を並べてみる

熟成酒のおもしろさは、年による違いを比べたときに際立ちます。同じ蔵の酒でも、十年前と二十年前では別の飲み物のように感じられることがあります。

日本酒の日に何か特別な一本を開けたいなら、こうした熟成酒の飲み比べは記憶に残る選択です。少量ずつ入ったセットなら、一晩で二種類を並べて味わえます。

15年以上の長期熟成を経た希少な古酒を、180mlずつ2銘柄そろえた飲み比べセットです。1999年と2010年という年号の違う酒を並べることで、熟成年数による色や香りの差をそのまま体感できます。金賞受賞酒を含む構成で、日本酒好きの方への贈り物にも向く内容。少量ずつのボトルなので、一晩で二種類をじっくり比べられるのも利点です。誕生日や敬老の日の贈答品としても選ばれています。

肴があってこその一杯

酒を盗みたくなるという名前

日本の珍味には、名前そのものが物語になっているものがあります。その代表が酒盗です。かつおの内臓を塩漬けにして熟成させた土佐の珍味で、これを口にすると酒が進みすぎて、人の酒まで盗んでしまいたくなる。そこからこの名がついたと伝えられています。

ごく少量を箸の先にとって、口の中でゆっくりとほどく。そこへ冷えた酒を流し込むと、塩気と旨みが酒の輪郭をはっきりさせます。クリームチーズに合わせたり、湯豆腐にのせたりという使い方も定番です。

かつおの内臓を塩漬けにして熟成させた、酒の肴の定番です。ごく少量で酒が進むため、60gの瓶が2本あれば長く楽しめます。そのまま箸の先でつまむのはもちろん、クリームチーズに合わせたり、湯豆腐や炊きたてのご飯にのせたりと使い道は幅広い一品。常温で保存できるので、来客のときのために棚に置いておける安心感があります。ギフトとしても選びやすい瓶詰です。

秋の肴を組み合わせる

季節の食材と合わせると、酒の印象はさらに変わります。

肴合わせたい酒ひとこと
いくらの醤油漬け冷やした生詰め酒塩気と旨みに、すっきりした酒が合う
秋鮭の西京漬けぬる燗の純米酒味噌の甘みと米の旨みが重なる
きのこの焼き浸し常温の純米酒土の香りに寄り添う
里芋の煮っころがしぬる燗ほっくりとした甘みに温かい酒
焼き栗熟成酒香ばしさと熟成香の相性が良い
塩辛・珍味冷酒から常温少量で長く飲める組み合わせ

開けたあとの扱いで味は守れる

空気と光と温度

日本酒は開栓した瞬間から少しずつ変化しはじめます。原因は主に空気に触れることと、光と温度です。

栓を開けたら冷蔵庫で保管し、瓶は寝かせずに立てておきます。横に寝かせると酒が栓に触れる面積が増え、変化が早まるためです。直射日光はもちろん、蛍光灯の光でも影響が出るといわれているので、箱に入れたまま冷蔵庫に置くのも良い方法です。

飲みきる目安は、封を開けてから数日から一週間ほど。生詰めや生酒はさらに早めがよいでしょう。容器内の空気を抜けるタイプの栓を使えば、変化をある程度抑えられます。

残ってしまったときの使い道

飲みきれずに残った酒は、料理に使うのが一番です。あさりの酒蒸し、魚の煮付け、鶏肉の下味、炊き込みご飯。市販の料理酒には塩や糖類が加えられていることが多いので、純粋な日本酒で仕上げると味の出方が変わります。

風味が落ちたと感じるものでも、加熱すれば十分に働いてくれます。捨てずに小さな瓶に移して、台所に置いておくとよいでしょう。

今年の10月1日は、器を替えて

日本酒の日の楽しみ方は人それぞれですが、もしひとつ提案するなら、同じ酒を二つの器で飲み比べてみてください。ガラスと陶器、あるいは大きな杯と小さな盃。それだけで、酒の香りの立ち方がまるで違うことに気づけます。

そしてこの季節には、夏を越したひやおろしが出そろっています。温度を変え、器を変え、肴を変える。手を動かすほどに発見がある飲み物だということが、きっと実感できるはずです。

秋の夜長に、気に入った一本と、気に入った器で。それが日本酒の日にふさわしい過ごし方だと思います。

なお、二十歳未満の飲酒は法律で禁じられています。また、車を運転される方や妊娠中の方は飲酒をお控えください。ご自身の適量を守って、秋の一杯をお楽しみください。


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