揖保乃糸という会社は存在しない?暑い夏を乗り切るためのそうめんの秘密を大解剖!

夏の風物詩・そうめんで涼をとる暮らしの知恵

暑い夏がやってくると、食欲も落ちがちになりますが、そんな時に恋しくなるのが冷たいそうめんです。氷水でキリッと冷やされたそうめんを、薬味たっぷりのつゆでいただく瞬間は、まさに夏の醍醐味といえます。

そうめんの起源と日本への伝来

そうめんをはじめとする麺類の原型は、奈良時代に中国から遣唐使によって日本に伝えられたとされています。当時の都である平城京から南に約20キロメートルほど離れた奈良県桜井市には、日本最古の神社といわれる大神神社があり、この一帯は現在でも「三輪そうめん」の産地として知られています。

古い文献を紐解くと、室町時代の1418年に記された「鵤庄引付」という古文書に「サウメン」という記述が見つかっており、これが日本におけるそうめんの最も古い記録とされています。600年以上も前から、日本人がそうめんを食していたという事実は、まさに驚きですね。

播州そうめんの発展と江戸時代の隆盛

兵庫県の播州地方では、室町時代からそうめん作りが始まったとされていますが、本格的な産業として発展したのは江戸時代のことでした。当時の龍野藩がそうめんの生産を奨励し、産業保護に努めたことから、この地域でのそうめん作りが大きく発展しました。

播州地方がそうめんの産地として栄えた背景には、いくつかの恵まれた条件がありました。まず、良質な小麦の産地であったこと、そして地域を流れる揖保川の軟水がそうめんの白さと風味を引き出すのに最適だったこと、さらには近隣の赤穂で良質な塩が生産されていたことなど、そうめん作りに必要な要素が揃っていたのです。

実は「揖保乃糸」という会社は存在しない

現在、日本を代表するそうめんブランドとして知られる「揖保乃糸」ですが、実は「揖保乃糸株式会社」などという会社は存在しません。これは多くの人が驚く事実ではないでしょうか。

揖保乃糸は、兵庫県手延素麺協同組合に所属する約400軒の生産者が、厳しい品質基準をクリアして作り上げるそうめんの統一ブランドなのです。明治5年(1872年)に品質や価格の安定を図るために生産者たちが結集した明神講の設立に始まり、明治20年(1887年)には正式に揖東西両郡素麺営業組合が認可されました。

厳選された原料小麦粉を使用し、組合が選抜した熟練製造者のみが作る最高級品。贈答用としても人気の逸品です。

品質管理と熟練の技術

揖保乃糸の品質を支えているのは、組合による徹底した品質管理システムです。約20人の検査指導員が日々生産者を巡回し、技術指導や品質チェックを行っています。このシステムにより、400もの生産者が作るそうめんでありながら、一定の品質を保つことができているのです。

揖保乃糸には、使用する小麦や麺の太さ、製造時期などによって複数のグレードが設定されており、それぞれ帯の色で区別されています。最高級の「三神」は黒帯、特級品も黒帯、上級品は赤帯、熟成麺は金色の帯といった具合に、消費者にも分かりやすい表示システムが確立されています。

そうめんの製造工程

揖保乃糸の製造は、毎年10月から翌年4月までの寒い時期に限定されています。これは「寒仕込み」と呼ばれる伝統的な製法で、寒さによって麺の熟成がゆっくりと進み、より美味しいそうめんができあがるとされています。

製造工程は非常に繊細で、まず小麦粉と食塩水をこね合わせて麺生地を作り、その後、数本の麺をねじり合わせて1本にする作業を熟成とともに繰り返していきます。この工程により、そうめん特有のコシと滑らかな食感が生まれるのです。

手延べ技法

最終的に麺を細く延ばす工程では、2本の管に8の字になるよう麺を掛け、少しずつ上下に引っ張ることで細長い麺に仕上げていきます。この作業には熟練の技術が必要で、職人の長年の経験と勘が重要な役割を果たします。

完成した麺は水分約12%になるまで乾燥させた後、19センチメートルの長さにカットされ、50グラムずつの束にまとめられます。このようにして、私たちがよく知る美しい白いそうめんが完成するのです。

夏の食卓を彩るそうめんの楽しみ方

そうめんの魅力は、そのシンプルさにあります。基本的にはつゆにつけて食べるだけですが、薬味や具材を変えることで、様々な味わいを楽しむことができます。

お中元や暑中見舞い、残暑見舞い等、夏のギフトとしても定番のそうめん。とっておきのこだわりの品を贈れば、喜ばれること間違いなさそうですね。

製造から1年間熟成させた「ひね」は、より一層コシが強く、舌触りも滑らかになった逸品。贈り物にも最適です。

夏の食卓に欠かせないそうめんの魅力

材料は小麦粉、塩、水というシンプルなものでありながら、職人の技術によって生まれる繊細な食感と風味は、まさに日本の食文化の真髄ですよね。

暑い夏の日に、キンキンに冷えたそうめんをつゆにつけて口に運ぶ瞬間の爽快感は、他の食べ物では味わえない特別なものです。そして、その一口一口に込められた長い歴史と職人たちの技術を思うとき、そうめんはより一層美味しく感じられますね。

今年の夏も、日本が誇るそうめんの魅力を存分に味わい、暑さを乗り切る生活の知恵として活用してみてはいかがでしょうか。


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