残暑が厳しいこの時期につるんと食べられる乾麵のご紹介!

残暑がまだ厳しいこの時期、台所に立つ時間はできるだけ短くしたいもの。そんなときに頼りになるのが、常温でストックできる「乾麺」です。近ごろは乾麺を特集したテレビ番組が話題になり、全国のご当地乾麺がにわかに注目を集めています。ゆでるだけ、という手軽さはそのままに、麺そのものの完成度が驚くほど上がっているのが今の乾麺の世界です。

この記事では、各地で独自に進化してきたご当地乾麺の魅力を、産地の背景やつくり方の工夫とともにたっぷりご紹介します。読み終わるころには、きっと一袋取り寄せてみたくなるはずです。

目次

乾麺はいつから日本の食卓にあるのか

奈良時代に海を渡ってきた「索餅」という原型

乾麺のルーツは、奈良時代に大陸から伝わったとされる「索餅(さくべい)」という食べ物にさかのぼります。小麦粉をこねて細長くより合わせたもので、宮中の行事食として記録に残っています。旧暦の七夕に索餅を食べる風習があり、これが後のそうめんへとつながっていったといわれています。夏にそうめんを食べる習慣が、千年以上前の行事にゆるやかに結びついているというのは、なんとも味わい深い話です。

室町から江戸にかけて、麺づくりは各地の寺社や商人の手で広まりました。とくに気温が低く乾燥した冬に仕込む「寒造り」の技法が確立したことで、麺を長く保存できるようになります。海のそばで塩が手に入りやすい土地、良質な小麦が採れる土地、乾いた風が吹く土地——そうした条件がそろった場所に、今も名だたる産地が残っているわけです。

手延べと機械製麺、それぞれの持ち味

乾麺のつくり方は、大きく「手延べ」と「機械製麺(切り麺)」に分けられます。

手延べは、生地に食用油などを塗りながら、より合わせては細く延ばす工程を何度も繰り返す方法です。この過程で生地の中のグルテンが一方向にそろい、細くてもぷつぷつと切れない、独特のなめらかさが生まれます。時間も手間もかかりますが、あの「つるん」とした喉越しは手延べならではです。

一方の機械製麺は、生地をローラーで薄く延ばして刃で切り出す方法。断面が角ばるため、つゆやスープがよくからみます。きしめんやひもかわのような幅広麺、中華麺の多くはこちらの製法です。近年は圧延を何段階にも分けたり、乾燥を低温で長時間かけたりと、手打ちに迫る食感を出す工夫が進んでいます。

「生麺に負けない」といわれるようになった理由

昔の乾麺は、どうしても「保存のために乾かしたもの」という位置づけでした。それが変わったのは、乾燥技術の進歩によるところが大きいと言われます。高温で一気に水分を飛ばすと麺が硬くなり、風味も飛んでしまう。そこで温度と湿度を何段階にも分けて、丸一日かけてゆっくり乾かす手法が広がりました。急がずに水分を抜くことで、麺の中に旨みが残り、ゆで上げたときの食感が生残暑がまだ厳しいこの時期、台所に立つ時間はできるだけ短くしたいもの。そんなときに頼りになるのが、常温でストックできる「乾麺」です。近ごろは乾麺を特集したテレビ番組が話題になり、全国のご当地乾麺がにわかに注目を集めています。ゆでるだけ、という手軽さはそのままに、麺そのものの完成度が驚くほど上がっているのが今の乾麺の世界です。

この記事では、各地で独自に進化してきたご当地乾麺の魅力を、産地の背景やつくり方の工夫とともにたっぷりご紹介します。読み終わるころには、きっと一袋取り寄せてみたくなるはずです。

乾麺はいつから日本の食卓にあるのか

奈良時代に海を渡ってきた「索餅」という原型

乾麺のルーツは、奈良時代に大陸から伝わったとされる「索餅(さくべい)」という食べ物にさかのぼります。小麦粉をこねて細長くより合わせたもので、宮中の行事食として記録に残っています。旧暦の七夕に索餅を食べる風習があり、これが後のそうめんへとつながっていったといわれています。夏にそうめんを食べる習慣が、千年以上前の行事にゆるやかに結びついているというのは、なんとも味わい深い話です。

室町から江戸にかけて、麺づくりは各地の寺社や商人の手で広まりました。とくに気温が低く乾燥した冬に仕込む「寒造り」の技法が確立したことで、麺を長く保存できるようになります。海のそばで塩が手に入りやすい土地、良質な小麦が採れる土地、乾いた風が吹く土地——そうした条件がそろった場所に、今も名だたる産地が残っているわけです。

手延べと機械製麺、それぞれの持ち味

乾麺のつくり方は、大きく「手延べ」と「機械製麺(切り麺)」に分けられます。

手延べは、生地に食用油などを塗りながら、より合わせては細く延ばす工程を何度も繰り返す方法です。この過程で生地の中のグルテンが一方向にそろい、細くてもぷつぷつと切れない、独特のなめらかさが生まれます。時間も手間もかかりますが、あの「つるん」とした喉越しは手延べならではです。

一方の機械製麺は、生地をローラーで薄く延ばして刃で切り出す方法。断面が角ばるため、つゆやスープがよくからみます。きしめんやひもかわのような幅広麺、中華麺の多くはこちらの製法です。近年は圧延を何段階にも分けたり、乾燥を低温で長時間かけたりと、手打ちに迫る食感を出す工夫が進んでいます。

「生麺に負けない」といわれるようになった理由

昔の乾麺は、どうしても「保存のために乾かしたもの」という位置づけでした。それが変わったのは、乾燥技術の進歩によるところが大きいと言われます。高温で一気に水分を飛ばすと麺が硬くなり、風味も飛んでしまう。そこで温度と湿度を何段階にも分けて、丸一日かけてゆっくり乾かす手法が広がりました。急がずに水分を抜くことで、麺の中に旨みが残り、ゆで上げたときの食感が生麺に近づくのです。

中華麺の分野でも、平らに置いて乾かすことで自然なちぢれを再現したり、麺を丸く曲げた状態で乾燥させたりと、産地ごとの発想が形になっています。全国の乾麺を評価するコンテストも毎年開催されており、作り手同士の切磋琢磨が味の底上げにつながっています。

全国で独自に進化したご当地乾麺

群馬・ゆで上がり幅5センチの衝撃「鬼ひも川」

まず驚かされるのが、群馬県の「ひもかわうどん」。もともとは織物の町として栄えた土地で、機織り職人がさっとゆでて手早く食べられるようにと、麺を平たく延ばしたのが始まりと伝えられています。

なかでも「鬼ひも川」は、ゆで上がりの幅がおよそ5センチ。もはやうどんというより、幅広のパスタや、ワンタンの皮を思わせる姿です。見た目のインパクトばかりが語られがちですが、実際に口に運ぶと、もちもちとした弾力とつるりとした舌ざわりが両立していて、幅広ならではの理由がちゃんとあることに気づきます。

食べ方は、温かい肉汁つゆにくぐらせる「つけ麺」スタイルが定番。麺が広い分つゆをたっぷり持ち上げてくれるので、少し濃いめのつゆがよく合います。冷たいざるにして、ごまだれで食べるのもおすすめです。

大正時代から続く老舗が手がける、群馬名物のひもかわうどん。ゆで上がり幅は約5センチと圧巻の幅広麺で、もちもちとした弾力とつるりとした喉越しが特徴です。肉汁つゆ付きなので、届いたその日からお店の味を再現できます。

長崎・椿油をまとった五島手延うどん

長崎県の五島列島でつくられる手延うどんは、遣唐使が大陸から持ち帰った製麺技術がルーツと伝えられています。日本三大うどんに数えられることもある、歴史ある麺です。

最大の特徴は、麺を延ばす工程で島の名産である椿油を使うこと。一般的な植物油の代わりに椿油をまとわせることで、表面がなめらかに仕上がり、するすると喉を通っていきます。細めながら芯にしっかりとしたコシがあり、のびにくいのも手延べならでは。

現地で親しまれている食べ方が「地獄炊き」です。土鍋でぐらぐらと沸かした湯に麺を放ち、ゆで上がったそばから鍋ごと食卓へ。各自が箸で直接すくい上げ、あごだしのつゆや、溶き卵にしょうゆを落としたたれにつけていただきます。名前は物騒ですが、湯気の立つ鍋を囲む光景はなんとも幸せなもので、涼しくなってくるこれからの季節にぴったりです。

島の名産である椿油をまとわせて延ばした、五島列島伝統の手延うどん。細めながらコシが強く、つるつるとした喉越しが持ち味です。鍋からすくって食べる「地獄炊き」でも、冷たいざるでもおいしくいただけます。

島根・熟成を重ねた「白梅」のうどん

島根県で創業から百年を超える製麺所が守り続けているのが、「白梅」シリーズのうどんです。生地を寝かせる「熟成」の工程にたっぷり時間をかけるのが身上で、この待つ時間が、ゆでたあとのもっちり感を左右します。

太打ちの丸麺タイプは、ゆで時間が18〜20分ほどとやや長めですが、その分ゆで伸びしにくく、鍋の締めや焼きうどんにしても最後まで食感が保たれます。表面はやわらかく、中心に力強い弾力が残る二層のような食感が魅力です。

平打ちタイプはつゆのからみがよく、かけうどんはもちろん、釜揚げにしてしょうがとねぎだけで食べても、小麦の香りがよく立ちます。同じ製麺所でも麺の形が変わると印象がずいぶん違うので、食べ比べてみるのも一興です。

創業百年を超える島根の製麺所が、熟成にじっくり時間をかけて仕上げた乾麺うどん。平打ちならではのつゆのからみのよさと、しっかりした弾力が持ち味です。かけ、釜揚げ、鍋の締めと出番の多い一品。

岩手・小麦粉と卵と塩だけでつくる「卵めん」

岩手県奥州市の江刺地方に伝わる「卵めん」は、材料が小麦粉・卵・塩のみ。つなぎを一切使わず、卵の力だけで生地をまとめる、ちょっと変わった郷土麺です。

その由来がまた面白く、江戸時代に長崎から逃れてきた人物が、南蛮渡来の焼き菓子づくりの製法をヒントに考案したと伝えられています。西洋の菓子の技術が、東北の山あいで麺に姿を変えたという、なんとも意外な道のりです。そうした背景から「蘭めん」という別名でも呼ばれてきました。

ゆでると、そうめんよりもやや太く、ひやむぎに近い姿。卵を使っているためほんのり黄色みを帯び、噛むとしゃきっとした歯ごたえが返ってきます。冷たいつゆはもちろん、温かい汁に入れてものびにくいので、朝食の一杯にも重宝します。地元では法事やお祝いの席でふるまわれてきた、ハレの日の麺でもあります。

小麦粉・卵・塩だけでつくられる、岩手県奥州市江刺の郷土麺。つなぎを使わないぶん、卵の風味としゃきっとした独特の歯ごたえが際立ちます。のびにくいので、冷やしても温かい汁物にしてもおいしくいただけます。

愛知・波を打つ薄さの名古屋きしめん

平たい麺の代表格といえば、やはり名古屋のきしめんでしょう。薄く幅広に切り出された麺は、火の通りが早く、つゆをよく吸います。

きしめんづくりの要は、生地を一気に薄くしないこと。圧延機を何台も通して、足踏みのように少しずつ延ばしていくことで、生地に無理な力がかからず、しなやかな腰が残ります。さらに、麺の縁を波状に切って表面に凹凸をつける「波切り」という技法を使うと、麺どうしがくっつきにくくなり、ゆで上がりがきれいにほぐれます。乾燥も温度を細かく分けて丸一日かけるなど、見えないところに手間が積み重なっています。

熱いかけつゆにたっぷりの削り節をのせた名古屋流はもちろん、油揚げと青菜だけのシンプルな一杯でも、麺のなめらかさがよくわかります。だしを吸いやすいので、少し薄めのつゆから試すのがおすすめです。

薄く幅広に切り出された、名古屋名物のきしめん乾麺。火の通りが早く、つゆをよく含むので、削り節をたっぷりのせたかけつゆや、油揚げと青菜のシンプルな一杯によく合います。ストックしておくと平日の夕食に重宝します。

喉越しを極めた「にゅるみ」の世界

乾麺の愛好家のあいだで語られる言葉に「にゅるみ」があります。やわらかいのにコシがあり、口に入れた瞬間にするりと滑っていく、あの独特の口当たりを指す表現です。この境地に達するには、延ばしと熟成を何度も繰り返す手延べの技術と、時間をかけた乾燥が欠かせません。

三重・大矢知に伝わる手延ひやむぎ

三重県四日市の大矢知地区は、およそ二百年前に旅の僧が農家へ製麺の技を伝えたのが始まりと語られる、手延べ麺の里です。伊勢湾からの風と、冬の乾いた空気が麺づくりに向いていたといわれます。

ここでつくられる手延ひやむぎは、高温で一気に乾かさず、じっくりと時間をかけて水分を抜くのが特徴。延ばしては寝かせ、また延ばすという工程を繰り返すことで、細いのに驚くほど強い弾力が生まれます。ゆで上げて氷水で締めると、麺の表面が引き締まり、まさに「にゅるん」と喉を滑っていく感覚が味わえます。

そうめんでは物足りない、うどんでは重い——そんなときにちょうどいいのがひやむぎです。めんつゆだけでなく、ごまだれや、トマトとオリーブオイルを合わせた洋風のたれにもよく合います。

三重・大矢知の伝統製法で、延ばしと熟成を繰り返してつくられる手延べひやむぎ。時間をかけて乾燥させることで、細いのに強い弾力と、するりとした喉越しが両立しています。氷水でしっかり締めるのがおすすめ。

乾麺の中華そばが、ここまで来た

かつて乾燥中華麺といえば、どうしても「即席麺の代用品」という印象がぬぐえませんでした。ところが近年、産地ごとの製法が持ち込まれたことで、状況が一変しています。

秋田・うどんの技を受け継いだ中華そば

秋田の稲庭地方といえば、細く平たい手延べうどんで知られる土地。その製法をそのまま中華麺に応用したのが、稲庭中華そばです。手綯(てない)の工程を経た麺は、断面がわずかに平たく、スープをよくまといます。細いのにやわらかく崩れず、するすると食べ進められるのが持ち味です。

スープも本格的で、地鶏と魚介を合わせた醤油ベースのものが定番。近ごろは、だしと香酢を合わせた冷やしがけや、ごまと花椒を効かせた担々麺風など、バリエーションも増えています。ひと袋で複数の味が楽しめるセットなら、その日の気分で選べて飽きません。

稲庭うどんの手延べ製法を受け継いだ、秋田の乾麺中華そば。細めで平たい麺がスープをよくまとい、するりとした喉越しが楽しめます。醤油、香酢を効かせた冷がけ、花椒香る担々麺と、味わいを選べるセットです。

和歌山・丸い形が生む、独特のちぢれ

和歌山のご当地ラーメンは、豚骨と醤油を合わせたスープが特徴。それを家庭で再現するために生まれたのが、乾麺タイプの和歌山中華そばです。

驚くのは麺の形。棒状でも角形でもなく、ドーナツのように丸く曲げた状態で乾かしてあります。この形にすることで麺に自然なうねりが残り、ゆで上げたときに生麺のようなちぢれが出るという仕組みです。揚げていないノンフライ麺なので、小麦の香りがしっかり残っているのもうれしいところ。

チャーシューや煮卵を用意しなくても、ねぎとメンマ、それに刻んだ生姜を少し添えるだけで、驚くほどそれらしい一杯になります。休日の昼食にちょうどいい存在です。

麺をドーナツ状に丸く曲げて乾燥させる独自製法により、ゆで上げると生麺のようなちぢれが生まれるノンフライ乾麺。和歌山ならではの豚骨醤油スープ付きで、ねぎとメンマを添えるだけで本格的な一杯になります。

千葉・麺を四つ折りにする「手折りめん」

千葉県鎌ケ谷市で乾麺一筋に六十年を重ねてきた製麺所が生み出したのが、「手折りめん」という製法です。乾燥させる前に、麺束をひとつずつ手作業で四つ折りにしてから乾かします。

棒状に伸ばして乾かす一般的な乾麺と違い、折りたたむことで麺に緩やかなうねりが残ります。結果として、ゆで上がりに自然なちぢれが生まれ、スープの持ち上がりがぐっとよくなるのです。手間のかかる工程をあえて残すあたりに、作り手のこだわりが表れています。

東京のラーメン店で親しまれてきた、澄んだ醤油スープに合わせた一杯は、こってりしたものが続いたあとにちょうどいい軽やかさ。スパイスが別添えになっているタイプなら、好みで香りを立たせることもできます。

麺束を一つひとつ手作業で四つ折りにしてから乾燥させる「手折りめん」製法により、ゆで上がりに自然なちぢれが生まれる乾麺。澄んだ醤油スープとの相性がよく、別添えのスパイスで好みの香りに調えられます。

ご当地乾麺 早わかり比較表

どれを選ぼうか迷ったときの目安として、今回ご紹介した麺の特徴をまとめました。

産地麺の種類麺の特徴おすすめの食べ方
群馬幅広うどんゆで上がり幅約5cm、もちもち温かい肉汁つけつゆ
長崎手延うどん椿油仕上げ、細めでコシ強め地獄炊き、ざる
島根うどん熟成による強い弾力、のびにくい釜揚げ、鍋の締め
岩手卵めんしゃきっとした歯ごたえ冷やし、温かい汁
愛知きしめん薄い平打ち、つゆをよく含むかけ、煮込み
三重手延ひやむぎやわらかいのにコシ、喉越し重視冷やしてつけつゆ
秋田中華そば平たく細い、スープがからむ醤油、冷やし、担々
和歌山中華そば丸曲げ乾燥による自然なちぢれ豚骨醤油
千葉中華そば四つ折り製法のうねり澄んだ醤油スープ

麺と同じくらい大切な、もう一方の主役「つゆ」

良い乾麺を取り寄せたのに、なんとなく物足りない。そんなときは、麺ではなくつゆのほうに原因があることが少なくありません。とくに冷たい麺は、口の中に入ってくる味のほとんどをつゆが担っています。麺にこだわったなら、つゆも一段引き上げてみる価値があります。

つゆ選びで押さえておきたいのは、「だしの素材」と「甘さの加減」のふたつ。関東と関西、東日本と西日本で好みが分かれるところですが、家庭ではむしろ、性格の違うつゆを二本そろえておくのが賢いやり方です。同じ麺でも、つゆを替えるだけで別の料理のように感じられます。

だしの香りで選ぶなら、鰹節屋がつくったつゆ

まず一本目におすすめしたいのが、鰹節を専門に扱ってきた作り手が手がけるタイプ。だしの原料そのものを扱ってきただけあって、封を開けた瞬間に立ちのぼる香りがまるで違います。

こうしたつゆは、しょうゆの塩気よりも節の風味が前に出るのが特徴です。手延べのうどんやひやむぎのように、麺そのものの香りが穏やかなものに合わせると、両者がぶつからずにきれいにまとまります。ざるのつけつゆはもちろん、かけつゆに薄めれば、削り節をひとつまみのせるだけで立派な一杯に。だし巻き卵や煮浸し、炊き込みごはんの味付けにも回せるので、一本あると台所での出番が絶えません。

鰹節を専門に扱ってきた作り手が仕立てた、節の香りが際立つめんつゆ。ざるのつけつゆからかけつゆ、煮物や丼の味付けまで幅広く使える万能タイプです。手延べの麺と合わせると、だしの余韻がすっと残ります。

甘めの九州風なら、湧水の里で生まれたつゆ

もう一本は、ぐっと趣の変わる南のつゆを。鹿児島県の指宿にある唐船峡は、豊かな湧水で知られる渓谷で、回転式のそうめん流しが生まれた地としても親しまれています。夏になると、冷たい水がぐるぐると回る器を家族で囲む——そんな光景が土地の風物詩になっています。

この地で親しまれてきためんつゆは、九州らしいまろやかな甘みが身上。関東の濃口に慣れていると最初は驚くかもしれませんが、冷たい麺との相性が抜群で、一度知るとこれでなければという人が出てくるほどです。薄めずそのまま使えるストレートタイプなので、暑い日に計量する手間がいらないのもうれしいところ。

甘みがある分、そうめんやひやむぎのような繊細な麺と好相性です。冷やし中華のたれに少し混ぜたり、鶏の照り焼きや野菜の煮びたしに使ったりと、和の甘辛い味付けにもそのまま応用できます。

そうめん流しで知られる鹿児島・唐船峡から届く、まろやかな甘みが特徴のめんつゆ。薄めずそのまま使えるストレートタイプで、冷たいそうめんやひやむぎによく合います。煮物や照り焼きの味付けにも便利です。

濃縮タイプの希釈の目安

濃縮つゆは、用途によって薄め方を変えるのが基本です。三倍濃縮タイプを使う場合の目安をまとめました。

使い方つゆ:水の割合ひとこと
つけつゆ(ざる)1:2〜3麺の水気が加わるので気持ち濃いめに
かけつゆ1:5〜6温かい汁は薄めが飲み飽きしない
天つゆ1:3大根おろしを加えると軽くなる
煮物・丼つゆ1:3〜4具材から水分が出る分を見込んで
鍋のつゆ1:6〜8締めの麺まで見越して薄めに

※濃縮倍率は商品によって異なります。実際の割合は表示をご確認ください。

つけつゆは、冷やした麺から水分が持ち込まれるため、味見の段階で「少し濃いかな」と感じるくらいがちょうど良く仕上がります。反対にかけつゆは、最後まで飲めるくらいの穏やかさに調えておくと、麺の香りが引き立ちます。

乾麺をおいしくゆでるための基本

せっかく良い麺を取り寄せても、ゆで方ひとつで印象は大きく変わります。難しい技術は必要ありませんが、押さえておきたい点がいくつかあります。

湯はたっぷり、鍋は大きく

麺100gに対して湯は1リットル以上が目安です。湯が少ないと温度が下がり、麺の表面から出るでんぷんで湯がどろりとして、べたつきの原因になります。深めの大きな鍋を用意して、ぐらぐらと沸いた状態を保ちながらゆでるのが基本です。

乾麺には製造時の塩分が含まれているため、ゆで湯に塩を加える必要はありません。麺を入れたら、菜箸で一度だけ大きくほぐし、あとはあまり触らないほうがきれいに仕上がります。

吹きこぼれには差し水よりも火加減で

昔ながらの「差し水(びっくり水)」は、湯量が少ない時代の知恵です。たっぷりの湯でゆでているなら、吹きこぼれそうになったら火を少し弱めるだけで十分。湯の温度を下げないほうが、麺の芯までむらなく火が通ります。

締める・ぬめりを取る

冷たくして食べる場合は、ゆで上がったらすぐにざるへ上げ、流水でしっかりもみ洗いします。表面のぬめりを落とすことで、麺の輪郭がはっきりし、つゆの味も濁りません。最後に氷水にくぐらせて締めれば、喉越しが一段と良くなります。

温かくして食べる場合も、一度湯洗いしてから温かいつゆに入れると、つゆが塩辛くならず澄んだ味に仕上がります。

ゆで時間の目安

麺の種類ゆで時間の目安覚えておきたいこと
そうめん1〜2分ゆですぎ厳禁、時計を見ながら
ひやむぎ3〜5分締める工程で食感が決まる
中華麺2〜4分硬めに上げてスープで仕上げる
きしめん5〜8分幅広は湯量を多めに
うどん(細)8〜12分途中で一本すくって確認を
うどん(太打ち丸麺)15〜20分芯が残らないようじっくり

※実際の時間は商品の表示を優先してください。

余った乾麺のおいしい使い道

乾麺は一度に一束ずつ使うとは限らず、袋の底に半端が残りがちです。そんなときのために、いくつか使い道を覚えておくと便利です。

焼きうどん・焼きそば風に。太めのうどんやきしめんは、ゆでてから水気をよく切り、油をひいたフライパンで強火で炒めます。麺の表面に少し焼き色をつけると、香ばしさが加わって別の料理のようになります。味付けにめんつゆを少量回しかけると、味が決まりやすくなります。

スープに直接入れて。ひやむぎや細めのうどんは、具だくさんのスープに折って入れるだけで一皿完成です。ゆで汁を使わないぶん塩気が出やすいので、味付けは控えめにしておきましょう。

洋風のたれで。手延べ麺は、実はオリーブオイルとの相性が良好です。ゆでて冷やした麺に、刻んだトマト、バジル、にんにく少々、オリーブオイルと塩を合わせるだけで、夏らしい一皿になります。中華麺なら、ゆでてから冷まし、ごま油とラー油、酢を合わせて和えるだけでも立派な副菜です。

保存のコツ。乾麺は高温多湿と匂い移りが苦手です。開封後は袋の口をしっかり閉じ、密閉できる容器に移して、直射日光の当たらない涼しい場所へ。洗剤や香りの強い調味料のそばは避けたほうが安心です。未開封であれば長期間置けますが、風味は少しずつ落ちていくので、おいしいうちに使い切るのが一番です。つゆも、開封後は冷蔵庫で保管し、早めに使い切りましょう。

まとめ

乾麺の面白さは、「保存できる食べもの」という枠を超えて、それぞれの土地の暮らしや歴史がそのまま形に残っているところにあります。織物の町で生まれた幅広の麺、島の油をまとった細い麺、南蛮渡来の菓子づくりから生まれた卵の麺——どれも偶然の産物ではなく、その場所にあったものと、そこで暮らした人の工夫が重なった結果です。

そして、麺と同じくらい土地の色が出るのがつゆ。節の香りで攻めるつゆと、甘みでまとめるつゆ、どちらが好みかは食べてみないとわかりません。産地の違う麺とつゆを掛け合わせて、自分だけの組み合わせを探すのも、乾麺の楽しみ方のひとつです。

乾燥技術が進んだ今、乾麺は「生麺の代わり」ではなく、乾麺にしか出せない食感を追い求める段階に入っています。ゆでるだけという手軽さはそのままに、味わいだけが確実に良くなっているのですから、使わない手はありません。

まずは気になった一袋と、お気に入りの一本から。ゆで時間を守り、しっかり締める。それだけで、いつもの一杯がずいぶん違って見えるはずです。


会員ログイン

無料会員登録

ソーシャルメディアはこちらから登録してください。

Google+でログイン

ログインに使うIDとパスワードを設定してください。

パスワード再設定

パスワード再設定用のメールを送信します。
ご登録時のメールアドレスを入力して「送信する」ボタンをクリックしてください。

Membership

An active membership is required for this action, please click on the button below to view the available plans.