春から出回る魅惑の柑橘!あまなつを楽しめるレシピのご紹介

甘夏の歴史と特徴をひもとく

古くから続く夏橙(ナツダイダイ)の系譜

甘夏は、日本で1700年頃に発生したとされる夏橙(夏みかん)から生まれた柑橘です。夏橙自体は非常に歴史が古く、長きにわたって日本国内で親しまれてきました。そこから変異というかたちで誕生したのが甘夏です。
昭和初期のある時期、大分県のとある園地に植えられていた夏橙の中から、ひときわ食味の良い実が見つかり、これが「甘夏みかん(川野夏橙)」の始まりとなりました。昭和25年(1950年)には品種登録が行われ、本格的に「甘夏みかん」として広く認知されるようになります。

広がりと一時の全盛期

甘夏は、その独特なほろ苦さとさわやかな甘みが人気となり、昭和30年代から大分県や熊本県、愛媛県などで集団栽培が進みました。温州みかんに次ぐ柑橘として、多くの果樹園で栽培が盛んに行われたのです。ところが、1970年代に輸入フルーツが増えて消費がやや減少し、それに伴って甘夏の栽培面積も減っていきました。しかし、厚い皮の下にある爽やかな苦みと程よい甘みは根強いファンを持ち、現在でも春から初夏にかけてスーパーや市場に並ぶ人気の柑橘です。

甘夏が愛される理由

甘夏は夏みかんよりも少し小ぶりで艶があり、酸味が比較的早く抜けるため、より甘味を感じやすいのが特徴です。また、夏みかんの系統を継いでいるため、独特のほろ苦さやジューシーさもしっかりと受け継いでいます。春から初夏にかけて楽しめる柑橘の代表格として、今も昔も多くの方に好まれているのです。

甘夏のおいしさを引き出す選び方と下ごしらえ

おいしい甘夏の見分け方

甘夏を選ぶときは、次のポイントをチェックするとよいです。

チェック項目解説
ヘタがしっかり乾燥していたり、ヘタが落ちかけているものは避けましょう。
重みがある持ったときにずしりと重みを感じるものが、果汁たっぷりでおすすめです。
皮に張りがあるしわや傷は多少あっても問題ありませんが、皮のハリがある方が果肉が良好です。

少々の傷やシミがあっても、外皮が硬くしっかりしていれば問題ありません。むしろ、傷があるからといって味に大きな影響はないことが多いので、重さや皮の状態を重視して選んでみてください。

皮のむき方と活用法

甘夏の皮は厚みがあるため、温州みかんのように手だけで簡単にむくのは少々難しいです。下記のステップを意識すると、スムーズに作業が進みます。

  1. 上下を切り落とす
    まな板に甘夏を置き、頭とお尻の部分を水平にスパッと切り落とします。
  2. リンゴをむくように外皮をカット
    縦方向に包丁を入れ、くるくると回しながらリンゴの皮をむくように外皮と白いワタをある程度そぎ落とします。
  3. 房に分けてタネを取る
    包丁の先で房と房の間に切れ目を入れ、実を取り出します。実の中にタネがある場合は、丁寧に取り除きましょう。

取り除いた皮や白いワタは、ジャムやマーマレード、ピールに再利用するのがおすすめです。ほろ苦さや香りを余すところなく楽しむことができます。

甘夏を楽しむためのアイデアいろいろ

甘夏は、そのまま食べるのはもちろん、料理やお菓子作りでも大活躍します。ここからは、甘夏を存分に味わうためのレシピアイデアをご紹介します。テーブルにまとめた後、いくつかのレシピは詳しい手順を解説していますので、ぜひ参考にしてください。

レシピ名特徴
皮ごと楽しむ甘夏マーマレードほろ苦さと甘さが絶妙。パンやヨーグルトのお供にぴったり。
電子レンジで作る簡単甘夏ジャム加熱時間短めで手軽。初心者でも作りやすい時短ジャム。
甘夏のピールチョコ皮を砂糖で煮詰め、チョコレートでコーティングしたおやつ。
甘夏たっぷりサラダグリーン野菜と合わさる甘夏の酸味と苦みがさわやか。
甘夏を使った爽快ドリンク炭酸水やハーブと合わせてリフレッシュ。
甘夏ケーキ(パウンドケーキやシフォンなど)甘夏の香りと生地の甘さが相性抜群の焼き菓子。
甘夏ゼリー果肉の粒感を楽しめる、さっぱりデザート。
甘夏寒天ぷるんとした食感で、甘夏のさわやかさを満喫。
甘夏ドレッシング酸味を生かした手作りドレッシングでサラダを格上げ。
甘夏を使ったメイン料理(肉や魚)ソースやマリネ液に果汁を使うと絶品。

以下では、とくに人気のあるレシピをいくつかピックアップして、詳しく解説します。


甘夏のおすすめレシピ集

甘夏マーマレード

甘夏の皮ごと楽しめる定番の一品です。ほろ苦さと甘さのコントラストが魅力で、トーストやパンケーキ、ヨーグルトとの相性が抜群です。

材料(4人分)

  • 甘夏…3個
  • 砂糖…甘夏の皮と果肉の合計重量の50~60%程度
  • 水…適量

作り方

  1. 下ゆでの準備
    甘夏の皮をむき、白いワタをある程度取り除いたら、食べやすい大きさに刻みます。
  2. 皮のアク抜き
    刻んだ皮を鍋に入れ、たっぷりの水で軽く煮立たせたら湯を捨てます。この作業を2~3回繰り返すと苦みが和らぎます。
  3. 果肉と合わせる
    外皮をアク抜きしたら、房から取り出した果肉(タネをのぞく)を鍋に加え、全体の重さをはかります。重さの50~60%にあたる砂糖を用意してください。
  4. 砂糖を加えて煮詰める
    鍋に果肉と皮、水少々、そして砂糖を入れ、弱火で煮詰めます。途中アクが出たら丁寧にすくい取りながら煮込んでいきます。
  5. 好みのとろみになったら完成
    ヘラですくったときに、ポタッと落ちるくらいのとろみになったら火を止めて完成です。粗熱が取れたら清潔な保存容器に移してください。

電子レンジで作る簡単甘夏ジャム

火にかけずにレンジで作れる、初心者にも優しいレシピです。忙しいときでも手軽に甘夏ジャムを楽しみたい方におすすめです。

材料(4人分)

  • 甘夏…2個
  • 砂糖…甘夏の皮と果肉の合計重量の50%程度
  • レモン汁…小さじ1(お好みで)

作り方

  1. 甘夏の準備
    甘夏の皮をむき、白いワタをざっくり取り除きます。皮は刻み、果肉は房から外してタネをとっておきましょう。
  2. 耐熱容器に入れる
    刻んだ皮と果肉を耐熱ボウルに入れ、砂糖を全体にまぶします。
  3. レンジ加熱
    ふんわりラップをかけ、電子レンジ(600W目安)で3分ほど加熱します。一度取り出して混ぜ、また2分ほど加熱します。
  4. とろみを調整
    水分量が多ければ、さらに1分ずつ様子を見ながら加熱します。好みのとろみになるよう加減してください。
  5. 仕上げ
    お好みでレモン汁を加えると味がしまります。粗熱がとれたら保存容器に移して完成です。

甘夏ピールチョコ

甘夏の皮を砂糖で煮詰めて乾燥させ、チョコレートでコーティングするお菓子です。ほろ苦さとチョコの甘さが絶妙にマッチします。

材料(4人分)

  • 甘夏の皮…2個分
  • 砂糖…皮の重量の同量
  • チョコレート…適量

作り方

  1. 皮の下処理
    甘夏の皮をむき、白いワタを丁寧に削ぎ落とします。長さ5~6cm、幅1cmほどのスティック状にカットしましょう。
  2. アク抜き
    鍋に皮と水を入れ、沸騰したら湯を捨てる工程を2回ほど繰り返します。苦みを和らげるための重要なステップです。
  3. 砂糖で煮詰める
    皮の重量と同量の砂糖を用意し、水を加えて弱火で煮詰めます。甘夏の皮が透明感を帯びたら火を止めて冷まします。
  4. 乾燥
    網やクッキングペーパーの上に広げ、表面がある程度乾くまで置きます。オーブンの低温機能で乾燥させても構いません。
  5. チョコレートでコーティング
    湯せんで溶かしたチョコレートにピールの半分ほどをくぐらせ、固まるまで冷やします。

甘夏たっぷりサラダ

みずみずしい甘夏とシャキシャキの野菜を組み合わせたシンプルなサラダです。ドレッシングの酸味だけでは出せない柑橘の香りがポイントになります。

材料(4人分)

  • 甘夏…1個
  • レタスやベビーリーフなど…適量
  • きゅうり…1本
  • お好みのドレッシング…適量
  • オリーブオイル、塩、こしょう…少々

作り方

  1. 野菜の準備
    レタスやベビーリーフは洗って水気をしっかり切ります。きゅうりは薄切りに。
  2. 甘夏の房を外す
    皮をむき、ひと房ずつ切れ目を入れて実を取り出します。房の薄皮が苦手な場合は除いてください。
  3. 合わせる
    ボウルに野菜と甘夏を入れ、塩・こしょう、オリーブオイルを軽くかけてざっくり混ぜます。
  4. ドレッシングをかける
    好みのドレッシングをかけて、さっぱり爽やかなサラダをお楽しみください。

甘夏ケーキ(パウンドケーキの例)

焼き菓子に甘夏の皮や果汁を加えることで、柑橘の香りが引き立つケーキに仕上がります。おやつや手土産にも便利です。

材料(パウンド型1本分)

  • 薄力粉…100g
  • ベーキングパウダー…小さじ1/2
  • バター(またはマーガリン)…80g
  • 砂糖…60g
  • 卵…2個
  • 甘夏の果汁…大さじ2
  • 甘夏の皮(すりおろし、または刻んだもの)…適量

作り方

  1. 下準備
    バターと卵は室温に戻しておきます。パウンド型にクッキングシートを敷いておきましょう。オーブンは170℃に予熱します。
  2. 生地を作る
    ボウルにバターを入れてクリーム状に練り、砂糖を加えてよくすり混ぜます。そこに溶いた卵を少しずつ加えて、分離しないようによく混ぜてください。
  3. 粉類と甘夏を合わせる
    薄力粉とベーキングパウダーを合わせてふるい入れ、ゴムベラでさっくり混ぜます。さらに甘夏の果汁とすりおろした皮を加え、生地を均一にします。
  4. 焼成
    生地をパウンド型に流し込み、170℃のオーブンで約30〜35分焼きます。竹串を刺して生地がついてこなければ完成です。
  5. 仕上げ
    粗熱が取れたら型から外し、完全に冷めるまでおいてください。甘夏の香りがふわっと広がるパウンドケーキの出来上がりです。

甘夏ゼリー

甘夏の果汁をたっぷり使ったゼリーは、暑い時期やさっぱりしたデザートが欲しいときにぴったりです。

材料(4人分)

  • 甘夏…2個(果汁:約200ml)
  • 水…果汁と合わせて約300mlになるように調整
  • 砂糖…お好みで30~50g
  • ゼラチン…5g(または寒天でも可)
  • お好みで甘夏の果肉…適量

作り方

  1. 果汁を搾る
    甘夏を半分に切り、絞って果汁をとります。種や果肉の繊維が混ざらないように、ザルでこしましょう。
  2. ゼラチンをふやかす
    ゼラチンは分量外の少量の水でふやかしておきます。寒天の場合は、粉寒天を直接煮溶かす工程を加えてください。
  3. 液を作る
    鍋に果汁と水、砂糖を入れて温め、砂糖を溶かします。グツグツ煮立たせないように注意してください。
  4. ゼラチンを加える
    火を止めてからゼラチンを加え、完全に溶かします。よくかき混ぜたら容器に流し込みます。
  5. 冷やし固める
    冷蔵庫で2時間以上冷やして固めます。お好みで甘夏の果肉をトッピングしてお召し上がりください。

甘夏を使ったメイン料理(肉・魚のソースやマリネ)

甘夏の酸味と苦味は、肉や魚料理にもぴったりです。ソースに少し加えるだけで、さっぱりとした風味が得られます。ここでは、鶏肉の甘夏ソース煮込みの例をご紹介します。

材料(4人分)

  • 鶏もも肉…2枚
  • 甘夏…1個(果汁&果肉を使う)
  • たまねぎ…1/2個
  • にんにく…1かけ
  • 水またはスープ…200ml程度
  • 塩・こしょう…適量
  • オリーブオイル…大さじ1

作り方

  1. 食材の準備
    鶏もも肉は余分な脂を取り除き、塩・こしょうを振って下味をつけます。たまねぎは薄切り、にんにくはみじん切りに。甘夏は果汁を搾り、果肉は房から取り出しておきます。
  2. 鶏肉を焼く
    フライパンを中火で熱し、オリーブオイルを敷いて鶏肉を皮目からこんがり焼きます。両面に焼き色がついたら一度取り出します。
  3. 香味野菜を炒める
    同じフライパンでにんにく、たまねぎを炒め、しんなりしてきたら鶏肉を戻します。
  4. 煮込み
    果汁と水(またはスープ)を加え、弱火で煮込みます。途中アクが出たらすくい取り、甘夏の果肉も加えてください。
  5. 仕上げ
    煮汁が少しとろりとしてきたら塩・こしょうで味を調整します。甘夏の風味が広がるソースを鶏肉に絡めて完成です。

甘夏を存分に味わうために

ここまで、甘夏の歴史や特徴、そしてさまざまなレシピをご紹介しました。甘夏は、ただそのまま食べるだけでなく、皮から果汁、果肉まで無駄なく活用できるのが魅力です。ほろ苦い風味はサラダやメイン料理のアクセントになり、甘味を引き立てることでスイーツにも大活躍します。

また、厚みのある皮を活かしてマーマレードやピール菓子を作るのは、甘夏を楽しむ定番の方法です。口に含んだときに広がる柑橘ならではの香りは、春から初夏の爽やかな気候にもぴったりではないでしょうか。

甘夏は日本国内で誕生した比較的新しい柑橘ではありますが、もともとの夏みかんが古くからあることもあり、日本の食卓においては長い歴史を持つ一面もあります。栽培面積こそ全盛期より減少したものの、その味わいを好むファンは少なくありません。特に3月から5月にかけてが旬なので、店頭で見かけた際にはぜひ手に取ってみてください。

甘夏は日本古来の伝統料理ではなく、日本で育てられてきた柑橘ではあるものの、今では海外でもその存在が知られつつあります。海外伝来の料理に甘夏を組み合わせるなど、自由な発想でアレンジして楽しんでいただくのもおすすめです。たとえば、マリネやカルパッチョに使うと、甘夏ならではのほろ苦さが味をひきしめます。

苦味と甘味のバランスを絶妙に楽しむことができる甘夏。その魅力を存分に引き出すレシピや調理法を試しながら、季節の移り変わりを感じてみてはいかがでしょうか。日々の食卓に取り入れることで、いつもの料理やおやつがほんの少し特別なものになるはずです。

皆様も、旬の時期に出回る甘夏を見つけたら、ぜひ試してみてください。マーマレードづくりやお菓子づくりに挑戦してみると、甘夏がもつ奥深い味わいを再認識できることでしょう。甘夏のある暮らしで、さわやかな春から初夏の風情を楽しんでいただければ幸いです。


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