シェフプロフィール

脇屋友詞 シェフ中華

概要
NHK「きょうの料理」をはじめ、多数のメディアでも活躍する中国料理のシェフ。現在、東京と横浜で4店舗のオーナーシェフを務める。上海料理をベースとし、旬の食材をふんだんに使った身体にやさしい料理が特徴。
大胆で繊細。素材の味を最大限に引き出した料理にファンも多い。
1958年北海道札幌市出身。
2010年現代の名工受賞
2014年黄綬褒章受賞

Wakiya一笑美茶樓

シェフプロフィール

Wakiya一笑美茶樓。脇屋友詞がオーナーシェフのこの店はWakiyaグループの旗艦店とも呼ばれる。ここは、一言でいえばゲストを「晴れがましい」気分にさせる空間だ。

赤坂の路地裏にあるアプローチもときめく隠れ家のような一軒家に一歩足を踏み入れると、驚くようなしっとりとしたそれでいて華やかな雰囲のしつらえと、スタッフのホスピタリティーに驚かされる。

 

はじめてこの店を夜訪れたのは、脇屋シェフが長年定期的に続けて来た「食材研究会」の席である。

産地にこだわり、旬の食材をテーマに開かれる宴の会は、心待ちにしている脇屋シェフのゲストに埋め尽くされており、それぞれのお客様のご予約時間にあわせ、各々のテーブルでさざめくようなディナータイムがスタートする。

料理は、上海料理をベースに、季節の素材を活かした一皿一皿、細やかな仕事を尽くした、繊細な味わいが特徴である。モダンチャイニーズの旗手と呼ばれるその料理は「五味(甘味、苦味、酸味、塩味、旨味)の調和」を標榜しており、既成概念にある中国料理ではなく、小さめの美しいポーションでサービスされ、ゲストたちは、意識しない間に、たくさんの食材を味わうことができる。

食事がしばらく進んだ頃、脇屋シェフが登場する。

それぞれのゲストのテーブルをゆっくり巡りながら、長年のお客様にも、ビジターの方にも順番に笑顔でお声がけする。

そもそも、メディアへの登場が多い脇屋シェフであるがこの「シェフのご挨拶」は、映画の一シーンを彷彿とさせる。

ご自身を含めたショーパフォーマンスは「食べること=愉しむこと」に昇華させた、Wakiya独自のスタイルであり、シェフと言葉を交わしたというその瞬間が、ディナーの大切な記憶となるに違いない。

食事の最後はWakiyaの得意分野の一つである選りすぐりの中国茶で余韻を愉しむ。

「ハレ」の日のひと時。

 

 

脇屋シェフは1958年3月20日、北海道札幌市に生まれた。

料理との出会いは、いくつかのメディアで紹介されているように、幼少の頃、病気がちの母の為につくったチャーハンが最初だという。父の作るチャーハンがおいしくなかったから自分でも作ってみたいと考えたとのことだが、脇屋少年の姿を微笑ましく思い浮かべてしまうようなエピソードである。また、今でも「母がこれを食べたらどう思うか」と考えながら料理をつくることがあるという。母親が大好きな息子の姿がそこにある。

 

やがて、料理の道を志した脇屋少年は、東京・赤坂の「山王飯店」を振り出しに、東京ヒルトンホテル、キャピトル東急ホテルなどで修行を積む。そこで、見出されたシェフは、東京都立川市のリーセントパークホテル総料理長などを経て、フレンチ料理人石鍋裕の指名を受けて1996年に「トゥーランドット游仙境」の代表取締役総料理長に就任。

1997年パンパシフィックホテル横浜(現 横浜ベイホテル東急)中国料理総料理長も兼務し、2001年には東京・赤坂に「Wakiya一笑美茶樓」(わきや いちえみちゃろう)をオープン、オーナーシェフを務めている。

 

母想いの少年の姿を伝えるヒストリー。

中国料理にフランス料理の要素を取り入れた「モダンチャイニーズ」 の先駆者として、オーナーとして、ゲストを艶やかな笑顔でもてなす姿。

 

そんな脇屋シェフは、厨房に入ると、一転、シェフとして、オーナーとして厳しい顔を見せる。食材に対して、そして、料理に対して真摯だからこその姿だが、わたしたちエピレシピの若手スタッフ一同、初日はこれまでになく緊張していた。

やがて、取材を重ね、緊張がほぐれ、いつものように撮影や、レシピの書き取りを行えるようになると、脇屋シェフが料理する「ほんとうの」スタイルが見えてくる。鍋を振るスピードは間違いなく早く、あっという間に一皿が出来上がっていくのであるが、よく見ると一片の肉を、太刀魚を、愛おしむように、ゆっくり、実に丁寧に火を通していることが分かる。調味料はほんの少しずつ。素材の味をぎりぎりに活かす、その瞬間を見極めるところは、あたりまえだが「さすが」である。

 

エピレシピ、登場三人目となる脇屋友詞シェフ。

イタリアンの片岡護氏、和食の田村氏とともに、卓越した技能者「現代の名工」のタイトルを持つ。三人の料理人に共通しているのは、食材を慈しむ姿と、味を「入れすぎない」点にある。食材本来が持つ、本当の味を愉しむための、極意とでもいうべきか。

エピレシピを見てつくってみたい方は、ご参考にされてはいかがだろうか。

記事:龍蔵寺 烏