焼き芋をもっとおいしく。品種の違い、甘さの秘密、家庭での焼き方

朝晩の空気がひんやりとしてきて、スーパーの入り口に焼き芋の機械が出はじめると、秋が深まったことを実感します。10月13日は「さつまいもの日」。この日付には、江戸の人々の洒落が今も残っています。

今回は、日付の由来から、さつまいもが日本に渡ってきた道のり、品種ごとの食感の違い、そして家で焼く方法と、焼かずに楽しむ冷凍焼き芋までをまとめてご紹介します。焼き芋は、ほんの少しの知識と道具で、驚くほど甘く仕上がる料理です。

10月13日が「さつまいもの日」になったわけ

栗より四里うまい十三里

江戸の町では、焼き芋が冬の名物として親しまれていました。焼き芋屋の看板に書かれた文句が、いまも語り継がれています。

はじめは「八里半」と掲げられていたといわれます。栗は「九里」と読み替えられ、栗に近いおいしさという意味で、九里に少し足りない八里半。ところがやがて、「栗(九里)より(四里)うまい十三里」という文句に変わりました。九と四を足して十三、栗よりうまいと言い切ったわけです。

この十三里とは、江戸から川越までの距離のこと。日本橋から川越まではおよそ50キロで、昔の単位でちょうど十三里ほどでした。つまり「十三里」は、焼き芋の名産地・川越を指す合言葉でもあったのです。

川越と芋の深い縁

川越のある武蔵野台地は、火山灰が積もった水はけのよい土地で、さつまいも栽培に向いていました。江戸に近く、街道を使って畑から町へ運べることも強みでした。川越の芋は江戸の焼き芋屋に重宝され、やがて「川越といえば芋」という評判が定着していきます。

10月13日のさつまいもの日は、この十三里の語呂にちなんで、地元で制定された記念日です。栗の季節に、栗より甘いと胸を張る。江戸の洒落が、そのまま記念日になりました。

海を渡ってきた芋のものがたり

原産は中南米

さつまいもは、もともと日本の作物ではありません。原産は中南米の熱帯地域とされ、大航海時代にヨーロッパ人の手で東南アジアへ運ばれ、そこから中国へと広がっていきました。

日本への渡来は、17世紀のはじめごろに琉球へ、続いて18世紀のはじめごろに薩摩へと伝わったといわれています。「さつまいも」の名は、この薩摩にちなんだものです。鹿児島では今も「からいも」と呼ぶ地域があり、中国から来た芋という意味合いが言葉に残っています。

seasonできごと
古い時代中南米で栽培される
大航海時代ヨーロッパ人により東南アジアへ
16世紀ごろ中国へ伝わる
17世紀はじめ琉球へ伝わる
18世紀はじめ薩摩へ伝わり、栽培が広がる
江戸時代中期飢饉への備えとして幕府が試作を後押しし、関東へ
江戸時代後期焼き芋屋が町に登場し、冬の名物に

飢饉から救った作物

さつまいもが日本の食卓に根づいたきっかけは、飢饉でした。やせた土地でも育ち、台風や日照りにも比較的強い。米が不作の年にも収穫が見込めることから、江戸時代の中ごろ、幕府が試作を後押しして、東日本にも栽培が広がりました。

腹持ちがよく、安価で、保存もきく。そうした実用の食べ物が、いつしか町人のおやつへと姿を変え、焼き芋という楽しみに行き着きます。命をつなぐための作物が、いまは冬の甘い楽しみになっているのですから、不思議なものです。

品種で変わる食感

さつまいもは、品種によって食感がまるで違います。大きく分けると「ほくほく」「しっとり」「ねっとり」の三つで、好みの方向を知っておくと、買うときに迷いません。

品種主な産地食感向いている食べ方
紅はるか茨城・千葉・鹿児島ほかねっとりとして甘みが強い焼き芋、冷やし焼き芋
安納芋種子島(鹿児島)蜜のようにとろりと濃厚焼き芋、デザート
シルクスイート茨城・千葉ほかきめ細かく、なめらかでしっとり焼き芋、スイートポテト
鳴門金時徳島栗のようにほくほく焼き芋、天ぷら、きんとん
紅あずま関東を中心にほくほくとして昔ながらの味焼き芋、大学芋、天ぷら

とろけるような甘さを求めるなら紅はるかや安納芋、懐かしいほくほく感なら鳴門金時や紅あずま。ひとつの品種で決めてしまわず、食べ比べて好みを探すのも楽しい秋の遊びです。

焼き芋が甘くなる理由

収穫してからの時間が甘みを育てる

掘りたてのさつまいもは、でんぷんが多く、甘みは控えめです。収穫後に貯蔵する間に、少しずつ甘みが増していきます。専門店が一か月以上寝かせた芋を使うのは、このためです。

新しい芋はほくほくと軽く、寝かせた芋はねっとりと濃くなる。同じ品種でも、収穫からの時間によって別の味になります。

低温でゆっくり温めるのがコツ

もうひとつの理由が、加熱の仕方です。芋のなかには、でんぷんを甘み成分(麦芽糖)に変える酵素があり、これがよく働くのは60〜75度ほどの温度帯とされています。

つまり、芋の中心がこの温度帯をゆっくり通り抜けるほど、甘みが引き出されます。急に高温で焼くと、酵素が働く前に温度が上がってしまい、甘みが乗りにくくなります。焼き芋に時間がかかるのは、そのためです。

石焼き芋の屋台が、石をじんわり温めて焼くのも、遠赤外線でじっくり火を通す理にかなっています。家庭でも、この「ゆっくり」を再現できる道具があれば、甘さは見違えます。

家で焼く焼き芋

鍋で焼く

屋台の石焼き芋の原理を、家庭の台所に持ち込んだのが焼き芋鍋です。厚みのある陶器の鍋で、蓄えた熱をやわらかく伝えながら焼き上げます。水を使わず、芋と鍋だけで火にかける空焚きなので、手順はごく簡単です。

セラミックの焼き芋鍋は、遠赤外線を放射して蓄熱性が高く、一度温まれば中火以下の火力で調理できるとされています。メーカーの案内では、焼き芋は約30分で完成します。鍋に付属の金網の下に水を入れれば蒸し器にもなるので、焼きとうもろこしや温野菜にも使えます。

使える熱源は、メーカーの案内ではガスコンロやカセットコンロが想定されています。IHについての記載は見当たらなかったため、IHコンロをお使いの方は、購入前に商品ページで必ずご確認ください。フッ素加工がなく、金属たわしで洗えるところも、焦げ付きが気になる焼き芋の道具としては心強い点です。

水を使わずに空焚きで焼き上げる、日本製のセラミック焼き芋鍋です。遠赤外線を放射して蓄熱性が高く、一度温まれば中火以下の火力で調理できます。メーカーの案内では約30分で焼き芋が完成します。付属の金網の下に水を入れれば蒸し器としても使え、焼きとうもろこしや温野菜にも活躍。直径約24.2cm、深さ6cmで、フッ素加工がないため金属たわしで洗えます。鍋蓋は裏返して本体に収まり、収納もすっきりです。

電気で全自動に焼く

ガスコンロの前につきっきりになるのが面倒な方には、電気の焼き芋メーカーがあります。温度とタイマーを設定して、あとは任せるだけ。焼き芋の「ゆっくり」を、機械が守ってくれます。

メーカーが公開している焼き方の目安は、基本が200度で60分、食感を大切にするなら170度で時間をかける方法です。冷凍した焼き芋を温め直す「二度焼き」の方法も案内されています。上下のプレートは取り外して丸洗いでき、収納時はコンパクトにまとまります。

秋から冬にかけて、毎週のように焼く方なら、結果的に一番ラクで失敗が少ない選択肢です。

100度から200度まで温度を調節でき、最長60分のタイマーを備えた家庭用の焼き芋メーカーです。さつまいもアンバサダー協会認定のモデルで、メーカーが公開している焼き方の目安は、基本が200度で60分、食感を重視するなら170度でじっくり。冷凍した焼き芋の温め直し方も案内されています。上下のプレートは取り外して丸洗いでき、収納時は約W35×D25×H15cmとコンパクト。定格消費電力は1200Wです。

オーブンやフライパンでも焼ける

専用の道具がなくても、台所にあるもので焼き芋はつくれます。どの方法も、芋の大きさによって時間が変わるので、あくまで目安としてご覧ください。

方法加熱の目安向いている場面手軽さ
焼き芋鍋(直火)弱〜中火で30分前後皮ごと香ばしく焼きたいふつう
焼き芋メーカー200度で60分(メーカー目安)放っておいて仕上げたいかんたん
オーブン160〜180度で60〜90分数本をまとめて焼きたいふつう
トースター低めの設定で40〜60分少量を気軽にかんたん
電子レンジ+トースター低めの出力で数分加熱し、仕上げに焼く急いでいるときとても簡単
フライパン蓋をして弱火で40〜60分道具を増やしたくないふつう

失敗しないための小さなコツ

焼き芋は、ちょっとした工夫で出来が変わります。

まず、洗ったあとは水気をしっかり拭き、皮はむかずに焼きます。太さがばらばらの芋を一緒に焼くと火の入りが揃わないので、なるべく同じくらいの太さを選んでください。

焼いている途中で何度も蓋を開けたり、芋をいじったりしないのもポイントです。熱が逃げて、温度が安定しません。焼き上がりの目安は、竹串がすっと通ること。皮の割れ目から、飴色の蜜がにじんできたらできあがりのサインです。

焼きたてをすぐに割らず、5〜10分ほど置いて余熱でなじませると、中までしっとり落ち着きます。アルミホイルで包むと蒸し焼きのようにしっとり、包まなければ皮が香ばしく仕上がります。好みで使い分けてみてください。

焼かずに楽しむ冷凍焼き芋

手間をかけずに、ねっとり甘く

家で焼くのは楽しいものの、1時間近く待つのは忙しい日には負担です。そんなときの強い味方が、冷凍焼き芋です。熟成させた芋をじっくり焼き上げて急速に冷凍したもので、食べたいときに食べたい分だけ取り出せます。

冷凍焼き芋は、解凍の仕方で表情が変わります。同じ一本でも、温度を変えるだけで別のおやつになります。

How to eat手順の目安食感
冷やし焼き芋冷蔵庫でゆっくり自然解凍ひんやりとして、ねっとり濃厚
温める電子レンジで加熱し、仕上げにトースターで焼くとろりと温かく、皮が香ばしい
半解凍室温で少しだけ置くシャーベットのような口当たり

実際の解凍方法は商品ごとに案内があるので、袋の表示に従ってください。

選ぶときは「量」と「使い道」で

冷凍焼き芋は、商品によって量も産地も違います。自分の使い方に合うものを選ぶのが近道です。

type産地内容量向いている場面
蜜焼き芋鹿児島県産500g×2袋(1kg)まず試してみたい、少人数
べにはるか茨城県産500g×4袋(2kg)家族のおやつやストック用
冷やし焼き芋九州産8本・個包装(1.6kg以上)お土産や贈り物、分けて食べる

まずは気軽に試したいなら、1kgの小分けセットが扱いやすい量です。

鹿児島県産の紅はるかを焼き上げ、冷凍した焼き芋です。500gずつ2袋に分かれているので、食べる分だけ袋を開けられ、残りは冷凍庫で保管できます。温めればとろりとした食感に、自然解凍で冷やせばアイスのようなひんやりした口当たりに。オーブンも鍋も出さずに、思い立った日にすぐ、蜜のような甘さを楽しめます。

家族で毎日のように食べるなら、2kgの大容量が向いています。小分けの袋なので、数日ごとに開ける分だけ取り出せます。

茨城県産のべにはるかを焼き芋にして冷凍した、500g入り4袋の大容量セットです。小分けの袋なので家族で分けやすく、毎日のおやつや朝食用にストックしておくのに向いています。そのままおやつに、温めてバターを添えて、凍ったまま少しずつ、とアレンジも自在。さつまいもの産地として知られる茨城の芋を、季節を問わず冷凍庫から取り出せる安心感があります。

贈り物やお土産にするなら、一本ずつ個包装になったものが便利です。人数に合わせて取り分けやすく、受け取った人も食べたい分だけ取り出せます。

九州産の紅はるかを使い、1000時間以上熟成させた芋を焼き上げた、冷凍の冷やし焼き芋です。おなじみサイズの芋が8本、個包装で届き、合計1.6kg以上。ひとつずつ取り出せるので、人数分に分けて食べる場面や、お土産・ギフトにも向きます。自然解凍でひんやり、ねっとりとした口当たりを楽しむ食べ方が基本です。ギフト向けにカードが付く出品なので、お歳暮やお返しの選択肢にもなります。

冷凍便で届くので、注文する前に冷凍庫の空き具合を確かめておくと安心です。2kgは意外にかさばります。

焼き芋を持ち寄る、手渡す

焼き芋は、包み方ひとつで気分が変わる食べ物です。新聞紙にくるんで手渡された焼き芋を思い出す方も多いでしょう。

焼き芋柄の紙袋があれば、おうちでつくった焼き芋が、ぐっと屋台らしい雰囲気になります。ご近所や職場へのお裾分け、ホームパーティー、お土産、イベントでの手渡しまで、焼きたてをさっと包んで渡せるのが便利です。写真に撮ったときの絵づくりにも向いています。

100枚入りなので、家庭用というよりは、人が集まる場面や、お裾分けをよくする方に向いています。

焼きいも柄がプリントされた紙袋で、サイズは16.5×27cm、100枚入りです。焼き芋を入れて手渡すだけで、屋台のような雰囲気になります。おうち焼き芋パーティー、イベントや販売、お土産にと、焼きたてを包んで渡す場面でぐっと映えます。100枚入りなので、ご近所や職場で分けるときにも十分な枚数。写真づくりにも使いやすい小道具です。

焼き芋のもうひと工夫

焼き芋はそのままでも十分おいしいのですが、少し手を加えると、また違った顔を見せてくれます。

アレンジひとこと
バターと塩割ったところに発酵バターをひとかけ、ひとつまみの塩を添えて
バニラアイス熱い芋に冷たいアイスをのせる、定番の組み合わせ
Cream cheese酸味が甘みを引き立てる、大人向けの味
簡単スイートポテトつぶして牛乳・砂糖・バターを混ぜ、形を整えてトースターで焼く
焼き芋ラテつぶした芋を温めた牛乳でのばす、冬の朝向けの一杯
焼き芋とほうじ茶香ばしさ同士で、飲み物との相性がよい

冷やし焼き芋をバニラアイスのように切って食べたり、凍ったまま少しずつ崩して口に運んだりするのも、冷凍焼き芋ならではの楽しみ方です。

さつまいもの保存は「冷やさない」が基本

さつまいもは寒さが苦手な野菜です。冷蔵庫に入れると低温で傷みやすく、味も落ちてしまいます。

生の芋は、洗わずに新聞紙で包み、10〜15度ほどの風通しのよい暗い場所に置くのが基本です。冬の寒い時期は、床に近い場所に置くと冷えすぎることがあるので、箱に入れて少し高い場所に移すなど工夫してください。

状態How to save日持ちの目安
生・丸ごと洗わず新聞紙で包み、10〜15度の暗所へ1〜2か月
焼いたあと(常温)粗熱を取って涼しい場所に当日〜翌日
焼いたあと(冷凍)一本ずつラップで包み、冷凍用の袋へ1か月ほど

多めに焼いた焼き芋は、冷めたら一本ずつラップに包んで冷凍しておけば、あとから温めて食べられます。冷凍した芋は、焼きたてのほくほく感とは違い、ねっとりした甘みが強くなるのが面白いところです。

今日は芋を焼く日に

10月13日は、栗より四里うまい十三里の日。江戸の人々が「栗より甘い」と胸を張った芋を、今夜は台所で焼いてみてはいかがでしょうか。

焼き芋鍋でじっくり、電気のメーカーで放っておいて、あるいは冷凍庫から取り出して。どの方法を選んでも、ゆっくり温められた芋の甘さは、秋の夜によく似合います。

そして、10月23日は十三夜です。こちらは栗や豆を供える「栗名月」「豆名月」の夜。栗と芋が並ぶ秋の食卓を、来週もご一緒に楽しみましょう。


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